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泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令

昭和50年自治省令第26号
消防法(昭和23年法律第186号)第21条の2第2項の規定に基づき、泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令を次のように定める。

第1章 総則

(趣旨)
第1条 この省令は、泡消火薬剤(水溶性液体用泡消火薬剤を除く。以下同じ。)の技術上の規格を定めるものとする。
(定義)
第2条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 泡消火薬剤 基剤に泡安定剤その他の薬剤を添加した液状のもので、水(海水を含む。以下第6号において同じ。)と一定の濃度に混合し、空気又は不活性気体を機械的に混入し、泡を発生させ、消火に使用する薬剤をいう。
 たん白泡消火薬剤 たん白質を加水分解したものを基剤とする泡消火薬剤をいう。
 合成界面活性剤泡消火薬剤 合成界面活性剤を基剤とする泡消火薬剤(次号に掲げるものを除く。)をいう。
 水成膜泡消火薬剤 合成界面活性剤を基剤とする泡消火薬剤で、油面上に水成膜を生成するものをいう。
 大容量泡放水砲用泡消火薬剤 石油コンビナート等災害防止法施行令(昭和51年政令第129号)第14条第5項に規定する大容量泡放水砲用泡消火薬剤である泡消火薬剤をいう。
 泡水溶液 泡消火薬剤に水を加え、3パーセント型にあっては3容量パーセント、6パーセント型にあっては6容量パーセントの濃度にした水溶液をいう。ただし、大容量泡放水砲用泡消火薬剤にあっては、設計された容量パーセントの濃度にした水溶液をいう。
 変質試験後の泡消火薬剤 泡消火薬剤を温度65度に216時間保った後に室温にもどし、かつ、温度零下18度に24時間保った後に室温にもどす試験を行った後の泡消火薬剤をいう。
 変質試験後の泡水溶液 変質試験後の泡消火薬剤に係る泡水溶液をいう。
(性状)
第3条 泡消火薬剤の性状は、次の各号に適合するものでなければならない。
 均質であること。
 変質防止のための有効な措置が講じられていること。
 発生した泡は、石油類その他の可燃性液体の表面を流動展開し、かつ、木材その他の固体の表面に付着するものであること。
 著しい毒性又は損傷性を有しないものであること。
(使用温度範囲)
第4条 泡消火薬剤は、零下5度以上30度以下(耐寒用泡消火薬剤にあっては零下10度以上30度以下、超耐寒用泡消火薬剤にあっては零下20度以上30度以下)の温度範囲(以下「使用温度範囲」という。)で使用した場合において、消火の機能を有効に発揮することができるものでなければならない。

第2章 泡消火薬剤

(比重)
第5条 泡消火薬剤(大容量泡放水砲用泡消火薬剤を除く。以下この章において同じ。)の比重は、JIS(産業標準化法(昭和24年法律第185号)第20条第1項の日本産業規格をいう。以下同じ。)Z8804に定める液体比重測定方法により、温度20度の泡消火薬剤をJISB7525に適合する比重浮ひようを用いて測定した場合において、次の表の上欄に掲げる泡消火薬剤の種別に応じ同表下欄に掲げる範囲内でなければならない。
泡消火薬剤の種別 比重の範囲
たん白泡消火薬剤 1・10以上 1・20以下
合成界面活性剤泡消火薬剤 0・90以上 1・20以下
水成膜泡消火薬剤 1・00以上 1・15以下
(粘度)
第6条 泡消火薬剤の粘度は、JISK2283に定める石油製品動粘度試験方法により使用温度範囲で測定した場合において、200センチストークス(たん白泡消火薬剤にあっては、400センチストークス)以下でなければならない。
(流動点)
第7条 泡消火薬剤の流動点は、JISK2269に定める石油製品流動点試験方法により測定した場合において、温度零下7・5度(耐寒用泡消火薬剤にあっては零下12・5度、超耐寒用泡消火薬剤にあっては零下22・5度)以下でなければならない。
(水素イオン濃度)
第8条 泡消火薬剤の水素イオン濃度は、温度20度の泡消火薬剤をJISZ8802に定めるPH測定方法により測定した場合において、次の表の上欄に掲げる泡消火薬剤の種別に応じ同表下欄に掲げる範囲内でなければならない。
泡消火薬剤の種別 水素イオン濃度の範囲
たん白泡消火薬剤 6・0以上 7・5以下
合成界面活性剤泡消火薬剤 6・5以上 8・5以下
水成膜泡消火薬剤 6・0以上 8・5以下
(沈澱量)
第9条 泡消火薬剤の沈澱量は、温度20度の泡消火薬剤をJISK2503に定める航空潤滑油試験方法により沈澱用ナフサを添加せずに測定した場合において、0・1容量パーセント以下でなければならない。
2 前項の測定後の泡消火薬剤の上澄み液に係る泡水溶液の沈澱量は、前項の規定の例により測定した場合において、0・05容量パーセント(合成界面活性剤泡消火薬剤にあっては、0・2容量パーセント)以下であり、かつ、白濁又は浮遊する生成物は、JISG3555に規定するステンレス鋼線平織金網80メツシユを容易に通過するものでなければならない。
3 変質試験後の泡消火薬剤の沈澱量は、第1項の規定の例により測定した場合において、0・2容量パーセント以下でなければならない。
(引火点)
第10条 泡消火薬剤の引火点は、JISK2265—3に定めるペンスキーマルテンス密閉法により測定した場合において、温度60度以上でなければならない。
(鋼等の腐食による質量損失)
第11条 鋼、黄銅及びアルミニウム(以下この条において「鋼等」という。)を温度38度の泡消火薬剤の中に21日間放置した場合において、鋼等の質量損失は、それぞれ、1日につき20平方センチメートル当り3ミリグラム以下でなければならない。
(発泡性能)
第12条 温度20度の泡水溶液を(大容量泡放水砲用泡消火薬剤の泡水溶液を除く。以下この章において同じ。)水圧力0・69メガパスカル、放水量10リットル毎分で別図第1に示す標準発泡ノズルを用いて発泡させた場合において、泡の膨脹率(泡水溶液の容量と発生する泡の容量との比をいう。以下次項において同じ。)は6倍(水成膜泡消火薬剤にあっては、5倍)以上であり、かつ、発泡前の泡水溶液の容量の25パーセントの泡水溶液が泡から還元するために要する時間は1分以上でなければならない。変質試験後の泡水溶液についても同様とする。
2 温度20度の泡水溶液(合成界面活性剤泡消火薬剤に係るものに限る。以下この項において同じ。)を水圧力0・1メガパスカル、放水量6リットル毎分、風量13立方メートル毎分で別図第2に示す標準発泡装置を用いて発泡させた場合において、泡の膨脹率は500倍以上であり、かつ、発泡前の泡水溶液の容量の25パーセントの泡水溶液が泡から還元するために要する時間は3分以上でなければならない。変質試験後の泡水溶液についても同様とする。
(消火性能)
第13条 泡消火薬剤の消火性能は、320リットルの水及び200リットルのガソリンを入れた別図第3に示すB火災模型(低発泡用)に点火し、点火1分後に温度20度の泡水溶液を前条第1項の規定の例により5分間(合成界面活性剤泡消火薬剤にあっては、8分間)連続して発泡させた場合において、次の各号に適合するものでなければならない。変質試験後の泡水溶液についても同様とする。
 消火に要する時間は5分以内であること。
 発泡終了後15分間(合成界面活性剤泡消火薬剤にあっては、12分間)別図第4に示す点火器を用いて泡面に炎を近づけても再燃しないものであること。
 発泡を終了してから15分後(合成界面活性剤泡消火薬剤にあっては、12分後)泡面の中央部に油面を1辺15センチメートルの正方形となるように露出させ、点火し、5分間燃焼させた場合において、油面の燃焼面積は、900平方センチメートル以下であること。
2 合成界面活性剤泡消火薬剤の消火性能は、前項の規定によるほか、温度20度の泡水溶液を前条第2項の規定の例により発泡させた場合において、次の各号に適合するものでなければならない。変質試験後の泡水溶液についても同様とする。
 128リットルの水及び80リットルのガソリンを入れた別図第5に示すB火災模型(高発泡用)に点火し、点火30秒後に2分30秒間連続して発泡させた場合において、消火に要する時間は3分以内であること。
 別図第6に示すA火災模型(高発泡用)に点火し、点火1分30秒後に5分間連続して発泡させた場合において、残炎が認められず、かつ、発泡終了後十分以内に再燃しないものであること。
(拡散係数)
第14条 泡水溶液(水成膜泡消火薬剤に係るものに限る。以下本条において同じ。)の拡散係数は、温度20度の泡水溶液をJISK8464に適合するシクロヘキサンを用いてJISK2241に定める切削油剤試験方法により測定した場合において、3・5以上でなければならない。変質試験後の泡水溶液についても同様とする。
(容器)
第15条 泡消火薬剤の容器は、次の各号の一に該当するもの又はこれらと同等以上の耐食性、耐撃性等を有するものでなければならない。
 JISZ1601に適合する鋼製タイトヘッドドラム
 JISZ1620に適合する鋼製ペール
 JISZ1706に適合するポリエチレンかん
(表示)
第16条 泡消火薬剤の容器には、次の各号に掲げる事項を見やすい箇所に容易に消えないように表示しなければならない。
 種別
 型式
 泡消火薬剤の容量
 使用温度範囲
 取扱い上の注意事項
 製造年月
 製造番号
 製造者名又は商標
 型式番号

第3章 大容量泡放水砲用泡消火薬剤

(比重)
第17条 大容量泡放水砲用泡消火薬剤の比重は、第5条に定める方法により測定した場合又はJISK0061に定める比重瓶法により温度20度の大容量泡放水砲用泡消火薬剤をハーバード型比重瓶を用いて測定した場合において、同条の表の上欄に掲げる泡消火薬剤の種別に応じ同表下欄に掲げる範囲内でなければならない。
(粘度)
第18条 大容量泡放水砲用泡消火薬剤の粘度は、第6条に定める方法又はJISZ8803に定める単一円筒形回転粘度計による粘度測定方法により使用温度範囲で測定した場合において、設計された粘度以下でなければならない。
(発泡性能)
第19条 温度20度の大容量泡放水砲用泡消火薬剤の泡水溶液(以下この条及び次条において単に「泡水溶液」という。)を水圧力0・7メガパスカル、放水量10リットル毎分で床面から高さ1・075メートルの位置に水平に固定された別図第7に示す大容量泡放水砲用発泡ノズルを用いて発泡させ、泡が自然落下する地点に設置した別図第8に示す泡コレクターを介して、別図第9に示す泡コンテナに泡を受けた場合において、泡の膨脹率(泡水溶液の容量と発生する泡の容量との比をいう。)は6倍(大容量泡放水砲用水成膜泡消火薬剤にあっては5倍)以上10倍未満であり、かつ、発泡前の泡水溶液の容量の25パーセントの泡水溶液が泡から還元するために要する時間は2分以上でなければならない。変質試験後の泡水溶液についても同様とする。
(消火性能)
第20条 大容量泡放水砲用泡消火薬剤の消火性能は、200リットルのノルマルヘプタンを入れた別図第10に示すB火災模型(大容量泡放水砲用)に点火し、点火1分後に温度20度の泡水溶液を前条の規定の例により当該模型の燃焼面中央付近に3分間連続して発泡させた場合において、次の各号に適合するものでなければならない。変質試験後の泡水溶液についても同様とする。
 消火に要する時間は4分以内であること。
 発泡を終了してから15分後に1リットルのノルマルヘプタンを入れた別図第11に示す耐火性試験用ポットを、その上縁が泡面と同じ高さになるように泡面の中央部に置いて点火し、5分間燃焼させた場合において、再燃しないものであること。
 発泡を終了してから20分後に別図第4に示す点火器を用いて泡面に炎を近づけても再燃しないものであること。
(表示)
第21条 大容量泡放水砲用泡消火薬剤の容器には、次の各号に掲げる事項を見やすい箇所に容易に消えないように表示しなければならない。
 種別
 型式
 大容量泡放水砲用泡消火薬剤の容量
 使用温度範囲
 取扱い上の注意事項
 製造年月
 製造番号
 製造者名又は商標
 型式番号
 大容量泡放水砲用泡消火薬剤である旨
(準用)
第22条 第7条から第11条まで、第14条及び第15条の規定は大容量泡放水砲用泡消火薬剤について準用する。

第4章 雑則

(基準の特例)
第23条 新たな技術開発に係る泡消火薬剤について、その成分及び性能から判断して、この省令の規定に適合するものと同等以上の性能があると総務大臣が認めた場合は、この省令の規定にかかわらず、総務大臣が定める技術上の規格によることができる。

附則

この省令は、昭和51年1月1日から施行する。
附則 (昭和50年12月22日自治省令第29号)
この省令は、昭和51年1月1日から施行する。
附則 (昭和62年3月18日自治省令第7号)
この省令は、公布の日から施行する。
附則 (平成10年9月28日自治省令第37号) 抄
(施行期日)
第1条 この省令は、平成11年10月1日から施行する。
(経過措置)
第2条 この省令の施行の際、現に日本消防検定協会の行う検定対象機械器具等についての試験を申請をしている消火器、消火薬剤、閉鎖型スプリンクラーヘッド、消防用ホース、一斉開放弁、泡消火薬剤、感知器及び発信機、流水検知装置、差込式結合金具並びにねじ式結合金具に係る試験については、なお従前の例による。
7 この省令の施行の際、現に型式承認を受けている泡消火薬剤に係る型式承認及び第1項の規定により従前の例によることとされた試験の結果に基づいて型式承認を受けた泡消火薬剤に係る型式承認は、第6条の規定による改正後の泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令の規格による型式承認とみなす。
附則 (平成12年9月14日自治省令第44号)
この省令は、内閣法の一部を改正する法律(平成11年法律第88号)の施行の日(平成13年1月6日)から施行する。
附則 (平成17年11月10日総務省令第151号)
この省令は、公布の日から施行する。
附則 (平成20年3月31日総務省令第44号)
1 この省令は、公布の日から施行する。
2 この省令の施行の際、現に日本消防検定協会の行う検定対象機械器具等についての試験を申請している泡消火薬剤に係る試験については、なお従前の例による。
3 この省令の施行の際、現に型式承認を受けている泡消火薬剤及び前項の規定により従前の例によることとされた試験の結果に基づいて型式承認を受けた泡消火薬剤に係る型式承認は、改正後の泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令の規格による型式承認とみなす。
附則 (令和元年6月28日総務省令第19号)
この省令は、不正競争防止法等の一部を改正する法律の施行の日(令和元年7月1日)から施行する。
別図第1
別図第2
別図第3
別図第4
別図第5
別図第6
別図第7
別図第8
別図第9
別図第10
別図第11

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