にっぽんこくとアメリカがっしゅうこくとのあいだのそうごきょうりょくおよびあんぜんほしょうじょうやくだい6じょうにもとづくしせつおよびくいきならびににっぽんこくにおけるがっしゅうこくぐんたいのちいにかんするきょうていのじっしにともなうけいじとくべつほう
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法
昭和27年法律第138号
第1章 総則
(定義)
第1条 この法律において「協定」とは、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定をいう。
2 この法律において「合衆国軍隊」とは、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づき日本国にあるアメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍をいう。
3 この法律において「合衆国軍隊の構成員」、「軍属」又は「家族」とは、協定第1条に規定する合衆国軍隊の構成員、軍属又は家族をいう。
第2章 罪
(施設又は区域を侵す罪)
第2条 正当な理由がないのに、合衆国軍隊が使用する施設又は区域(協定第2条第1項の施設又は区域をいう。以下同じ。)であって入ることを禁じた場所に入り、又は要求を受けてその場所から退去しない者は、1年以下の懲役又は2000円以下の罰金若しくは科料に処する。但し刑法(明治40年法律第45号)に正条がある場合には、同法による。
(証拠を隠滅する等の罪)
第3条 協定によりアメリカ合衆国の軍事裁判所(以下「合衆国軍事裁判所」という。)が裁判権を行使する他人の刑事被告事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、2年以下の懲役又は1万円以下の罰金に処する。
2 犯人の親族が犯人の利益のために前項の罪を犯したときは、その刑を免除することができる。
(偽証等の罪)
第4条 合衆国軍事裁判所の手続に従って宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3月以上10年以下の懲役に処する。
2 前項の罪を犯した者が、証言した事件の裁判の確定前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
3 合衆国軍事裁判所の手続に従って宣誓した鑑定人又は通訳人が虚偽の鑑定又は通訳をしたときは、前2項の例による。
(軍用物を損壊する等の罪)
第5条 合衆国軍隊に属し、且つ、その軍用に供する兵器、弾薬、糧食、被服その他の物を損壊し、又は傷害した者は、5年以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する。
(合衆国軍隊の機密を侵す罪)
第6条 合衆国軍隊の機密(合衆国軍隊についての別表に掲げる事項及びこれらの事項に係る文書、図画若しくは物件で、公になっていないものをいう。以下同じ。)を、合衆国軍隊の安全を害すべき用途に供する目的をもって、又は不当な方法で、探知し、又は収集した者は、10年以下の懲役に処する。
2 合衆国軍隊の機密で、通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなものを他人に漏らした者も、前項と同様とする。
3 前2項の未遂罪は、罰する。
第7条 前条第1項又は第2項の罪の陰謀をした者は、5年以下の懲役に処する。
2 前条第1項又は第2項の罪を犯すことを教唆し、又はせん動した者も、前項と同様とする。
3 前項の規定は、教唆された者が、教唆に係る犯罪を実行した場合において、刑法総則に定める教唆の規定の適用を排除するものではない。
第8条 第6条第1項の罪、同項に係る同条第3項の罪又は同条第1項に係る前条第1項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
(制服を不当に着用する罪)
第9条 正当な理由がないのに、合衆国軍隊の構成員の制服又はこれに似せて作った衣服を着用した者は、拘留又は科料に処する。
第3章 刑事手続
(施設又は区域内の逮捕等)
第10条 合衆国軍隊がその権限に基いて警備している合衆国軍隊の使用する施設又は区域内における逮捕、勾引状又は勾留状の執行その他人身を拘束する処分は、合衆国軍隊の権限ある者の同意を得て行い、又はその合衆国軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。
2 死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁こにあたる罪に係る現行犯人を追跡して前項の施設又は区域内において逮捕する場合には、同項の同意を得ることを要しない。
(逮捕された合衆国軍隊の構成員又は軍属の引渡)
第11条 検察官又は司法警察員は、逮捕された者が合衆国軍隊の構成員又は軍属であり、且つ、その者の犯した罪が協定第17条第3項(a)に掲げる罪のいずれかに該当すると明らかに認めたときは、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)の規定にかかわらず、直ちに被疑者を合衆国軍隊に引き渡さなければならない。
2 司法警察員は、前項の規定により被疑者を合衆国軍隊に引き渡した場合においても、必要な捜査を行い、すみやかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。
(合衆国軍隊によって逮捕された者の受領)
第12条 検察官又は司法警察員は、合衆国軍隊から日本国の法令による罪を犯した者を引き渡す旨の通知があった場合には、裁判官の発する逮捕状を示して被疑者の引渡を受け、又は検察事務官若しくは司法警察職員にその引渡を受けさせなければならない。
2 検察官又は司法警察員は、引き渡されるべき者が日本国の法令による罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があって、急速を要し、あらかじめ裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げてその者の引渡を受け、又は受けさせなければならない。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。
3 前2項の場合を除く外、検察官又は司法警察員は、引き渡される者を受け取った後、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。
4 第1項又は第2項の規定による引渡があった場合には、刑事訴訟法第199条の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。但し、同法第203条、第204条及び第205条第2項に規定する時間は、引渡があった時から起算する。
(施設又は区域内の差押え、捜索等)
第13条 合衆国軍隊がその権限に基づいて警備している合衆国軍隊の使用する施設若しくは区域内における、又は合衆国軍隊の財産についての捜索(捜索状の執行を含む。)、差押え(差押状の執行を含む。)、記録命令付差押え(記録命令付差押状の執行を含む。)又は検証は、合衆国軍隊の権限ある者の同意を得て行い、又は検察官若しくは司法警察員からその合衆国軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。ただし、裁判所又は裁判官が必要とする検証の嘱託は、その裁判所又は裁判官からするものとする。
(日本国の法令による罪に係る事件についての捜査)
第14条 協定により合衆国軍事裁判所が裁判権を行使する事件であっても、日本国の法令による罪に係る事件については、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、捜査をすることができる。
2 前項の捜査に関しては、裁判所又は裁判官は、令状の発付その他刑事訴訟に関する法令に定める権限を行使することができる。
(証人の出頭等の義務)
第15条 合衆国軍事裁判所の嘱託により、裁判官から合衆国軍事裁判所に証人として出頭すべき旨を命ぜられ、又は合衆国軍事裁判所において宣誓若しくは証言を求められた者は、これに応じなければならない。
2 前項の者が、正当な理由がないのに、出頭せず、又は宣誓若しくは証言を拒んだときは、1万円以下の過料に処する。
(証人の勾引についての協力)
第16条 正当な理由がないのに、前条第1項の規定による裁判官の出頭命令に応じない証人について合衆国軍事裁判所から嘱託があったときは、裁判官は、その証人に対して勾引状を発して、これを合衆国軍事裁判所に勾引することができる。
2 前項の勾引状には、合衆国軍事裁判所の嘱託の趣旨を記載しなければならない。
3 第1項の勾引状は、検察官の指揮により、司法警察職員が執行する。
4 刑事訴訟法第71条及び第73条第1項前段の規定は、第1項の規定による勾引に準用する。
(書類又は証拠物の提供等)
第17条 裁判所、検察官又は司法警察員は、その保管する書類又は証拠物について、合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊から、刑事事件の審判又は捜査のため必要があるものとして申出があったときは、その閲覧若しくは謄写を許し、謄本を作成して交付し、又はこれを一時貸与し、若しくは引き渡すことができる。
(日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件についての協力)
第18条 検察官又は司法警察員は、合衆国軍隊から、日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件につき、合衆国軍隊の構成員、軍属又は合衆国の軍法に服する家族の逮捕の要請を受けたときは、これを逮捕し、又は検察事務官若しくは司法警察職員に逮捕させることができる。
2 合衆国軍隊から逮捕の要請があった者が、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内にいることを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官の許可を得て、その場所に入りその者を捜索することができる。但し、追跡されている者がその場所に入ったことが明らかであって、急速を要し裁判官の許可を得ることができないときは、その許可を得ることを要しない。
3 第1項の規定により合衆国軍隊の構成員、軍属又は合衆国の軍法に服する家族を逮捕したときは、直ちに検察官又は司法警察員から、その者を合衆国軍隊に引き渡さなければならない。
4 司法警察員は、前項の規定により合衆国軍隊の構成員、軍属又は合衆国の軍法に服する家族を引き渡したときは、その旨を検察官に通報しなければならない。
第19条 検察官又は司法警察員は、合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊から、日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件につき、協力の要請を受けたときは、参考人を取り調べ、実況見分をし、又は書類その他の物の所有者、所持者、若しくは保管者にその物の提出を求めることができる。
2 検察官又は司法警察員は、検察事務官又は司法警察職員に前項の処分をさせることができる。
3 前2項の処分に際しては、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、その処分を受ける者に対して合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊の要請による旨を明らかにしなければならない。
4 正当な理由がないのに、第1項又は第2項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の処分を拒み、妨げ、又は忌避した者は、1万円以下の過料に処する。
(刑事補償)
第20条 刑事補償法(昭和25年法律第1号)又は少年の保護事件に係る補償に関する法律(平成4年法律第84号)の適用については、合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊による抑留又は拘禁は、刑事訴訟法による抑留若しくは拘禁又は少年の保護事件に係る補償に関する法律第2条第1項第2号に掲げる身体の自由の拘束とみなす。
附則
この法律は、公布の日から施行する。
附則 (昭和28年11月12日法律第264号) 抄
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 検察官又は司法警察員は、逮捕された者が合衆国軍隊の構成員、軍属又は家族であり、且つ、その者の犯した罪が昭和28年10月29日前の行為に係るものであることを確認したときは、この法律による改正後の第11条第1項の規定により引渡をなすべき場合に該当しない場合においても、刑事訴訟法の規定にかかわらず、直ちに被疑者を合衆国軍隊に引き渡さなければならない。
3 司法警察員は、前項の規定により被疑者を合衆国軍隊に引き渡した場合においても、必要な捜査を行い、すみやかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。
附則 (昭和35年6月23日法律第102号) 抄
(施行期日)
第1条 この法律は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の効力発生の日から施行する。
(第13条関係の経過規定)
第10条 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第17条第12項の規定により日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基く行政協定第17条の当該時に存在した規定が適用されるべき事件については、この法律による改正後の日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法第10条から第19条までの規定を適用しない。この場合においては、この法律による改正前の日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基く行政協定に伴う刑事特別法第10条から第19条まで並びに日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律(昭和28年法律第264号)附則第2項及び第3項の規定の定めるところによる。
2 この法律の施行前に合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊によってされた抑留又は拘禁についての刑事補償法(昭和25年法律第1号)の適用に関しては、なお従前の例による。
附則 (平成4年6月26日法律第84号) 抄
(施行期日等)
1 この法律は、公布の日から起算して90日を超えない範囲内において政令で定める日から施行し、この法律の施行後に第2条に規定する決定があった保護事件に係る身体の自由の拘束又は没取について適用する。
附則 (平成23年6月24日法律第74号) 抄
(施行期日)
第1条 この法律は、公布の日から起算して20日を経過した日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第2条の規定、第3条中組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という。)第71条第1項の改正規定、第4条及び第5条の規定並びに附則第10条から第12条まで及び第16条の規定 公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日
別表
一 防衛に関する事項
イ 防衛の方針若しくは計画の内容又はその実施の状況
ロ 部隊の隷属系統、部隊数、部隊の兵員数又は部隊の装備
ハ 部隊の任務、配備又は行動
ニ 部隊の使用する軍事施設の位置、構成、設備、性能又は強度
ホ 部隊の使用する艦船、航空機、兵器、弾薬その他の軍需品の種類又は数量
二 編制又は装備に関する事項
イ 編制若しくは装備に関する計画の内容又はその実施の状況
ロ 編制又は装備の現況
ハ 艦船、航空機、兵器、弾薬その他の軍需品の構造又は性能
三 運輸又は通信に関する事項
イ 軍事輸送の計画の内容又はその実施の状況
ロ 軍用通信の内容
ハ 軍用暗号
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