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日本国との平和条約

昭和27年4月28日条約第5号

昭和26年9月8日サン・フランシスコ市で署名
昭和26年11月18日批准
昭和26年11月28日批准書寄託
昭和27年4月28日効力発生
昭和27年4月28日公布(条約第5号)

前文

連合国及び日本国は、両者の関係が、今後、共通の福祉を増進し且つ国際の平和及び安全を維持するために主権を有する対等のものとして友好的な連携の下に協力する国家の間の関係でなければならないことを決意し、よって、両者の間の戦争状態の存在の結果として今なお未決である問題を解決する平和条約を締結することを希望するので、日本国としては、国際連合への加盟を申請し且つあらゆる場合に国際連合憲章の原則を遵守し、世界人権宣言の目的を実現するために努力し、国際連合憲章第55条及び第56条に定められ且つ既に降伏後の日本国の法制によって作られはじめた安定及び福祉の条件を日本国内に創造するために努力し、並びに公私の貿易及び通商において国際的に承認された公正な慣行に従う意思を宣言するので、連合国は、前項に掲げた日本国の意思を歓迎するので、よって、連合国及び日本国は、この平和条約を締結することに決定し、これに応じて下名の全権委員を任命した。これらの全権委員は、その全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、次の規定を協定した。

第1章 平和

第1条 
(戦争の終了)
(a) 日本国と各連合国との間の戦争状態は、第23条の定めるところによりこの条約が日本国と当該連合国との間に効力を生ずる日に終了する。
(主権の承認)
(b) 連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する。

第2章 領域

(領土権の放棄)
第2条 
(a) 日本国は、朝鮮の独立を承認して、済州島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
(b) 日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
(c) 日本国は、千島列島並びに日本国が1905年9月5日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
(d) 日本国は、国際連盟の委任統治制度に関連するすべての権利、権原及び請求権を放棄し、且つ、以前に日本国の委任統治の下にあった太平洋の諸島に信託統治制度を及ぼす1947年4月2日の国際連合安全保障理事会の行動を受諾する。
(e) 日本国は、日本国民の活動に由来するか又は他に由来するかを問わず、南極地域のいずれの部分に対する権利若しくは権原又はいずれの部分に関する利益についても、すべての請求権を放棄する。
(f) 日本国は、新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
(信託統治)
第3条 日本国は、北緯29度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)、孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島を合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。
(財産)
第4条 
(a) この条の(b)の規定を留保して、日本国及びその国民の財産で第2条に掲げる地域にあるもの並びに日本国及びその国民の請求権(債権を含む。)で現にこれらの地域の施政を行っている当局及びそこの住民(法人を含む。)に対するものの処理並びに日本国におけるこれらの当局及び住民の財産並びに日本国及びその国民に対するこれらの当局及び住民の請求権(債権を含む。)の処理は、日本国とこれらの当局との間の特別取極の主題とする。第2条に掲げる地域にある連合国又はその国民の財産は、まだ返還されていない限り、施政を行っている当局が現状で返還しなければならない。(国民という語は、この条約で用いるときはいつでも、法人を含む。)
(b) 日本国は、第2条及び第3条に掲げる地域のいずれかにある合衆国軍政府により、又はその指令に従って行われた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する。
(c) 日本国とこの条約に従って日本国の支配から除かれる領域とを結ぶ日本所有の海底電線は、2等分され、日本国は、日本の終点施設及びこれに連なる電線の半分を保有し、分離される領域は、残りの電線及びその終点施設を保有する。

第3章 安全

(国連の集団保障、自衛権)
第5条 
(a) 日本国は、国際連合憲章第2条に掲げる義務、特に次の義務を受諾する。
(i) その国際紛争を、平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決すること。
(ii) その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使は、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むこと。
(iii) 国際連合が憲章に従ってとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合が防止行動又は強制行動をとるいかなる国に対しても援助の供与を慎むこと。
(b) 連合国は、日本国との関係において国際連合憲章第2条の原則を指針とすべきことを確認する。
(c) 連合国としては、日本国が主権国として国際連合憲章第51条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する。
(占領の終了)
第6条 
(a) 連合国のすべての占領軍は、この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後90日以内に、日本国から撤退しなければならない。但し、この規定は、1又は2以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結された若しくは締結される2国間若しくは多数国間の協定に基く、又はその結果としての外国軍隊の日本国の領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。
(b) 日本国軍隊の各自の家庭への復帰に関する1945年7月26日のポツダム宣言の第9項の規定は、まだその実施が完了されていない限り、実行されるものとする。
(c) まだ代価が支払われていないすべての日本財産で、占領軍の使用に供され、且つ、この条約の効力発生の時に占領軍が占有しているものは、相互の合意によって別段の取極が行われない限り、前記の90日以内に日本国政府に返還しなければならない。

第4章 政治及び経済条項

(2国間条約の効力)
第7条 
(a) 各連合国は、自国と日本国との間にこの条約が効力を生じた後1年以内に、日本国との戦前のいずれの2国間の条約又は協約を引き続いて有効とし又は復活させることを希望するかを日本国に通告するものとする。こうして通告された条約又は協約は、この条約に適合することを確保するための必要な修正を受けるだけで、引き続いて有効とされ、又は復活される。こうして通告された条約及び協約は、通告の日の後3箇月で、引き続いて有効なものとみなされ、又は復活され、且つ、国際連合事務局に登録されなければならない。日本国にこうして通告されないすべての条約及び協約は、廃棄されたものとみなす。
(b) この条の(a)に基いて行う通告においては、条約又は協約の実施又は復活に関し、国際関係について通告国が責任をもつ地域を除外することができる。この除外は、除外の適用を終止することが日本国に通告される日の3箇月後まで行われるものとする。
第8条 
(終戦関係条約の承認)
(a) 日本国は、連合国が1939年9月1日に開始された戦争状態を終了するために現に締結し又は今後締結するすべての条約及び連合国が平和の回復のため又はこれに関連して行う他の取極の完全な効力を承認する。日本国は、また、従前の国際連盟及び常設国際司法裁判所を終止するために行われた取極を受諾する。
(特定条約上の権益の放棄)
(b) 日本国は、1919年9月10日のサン・ジェルマン=アン=レイの諸条約及び1936年7月20日のモントルーの海峡条約の署名国であることに由来し、並びに1923年7月24日にローザンヌで署名されたトルコとの平和条約の第16条に由来するすべての権利及び利益を放棄する。
(c) 日本国は、1930年1月20日のドイツと債権国との間の協定及び1930年5月17日の信託協定を含むその附属書並びに1930年1月20日の国際決済銀行に関する条約及び国際決済銀行の定款に基いて得たすべての権利、権原及び利益を放棄し、且つ、それらから生ずるすべての義務を免かれる。日本国は、この条約の最初の効力発生の後6箇月以内に、この項に掲げる権利、権原及び利益の放棄をパリの外務省に通告するものとする。
(漁業協定)
第9条 日本国は、公海における漁猟の規制又は制限並びに漁業の保存及び発展を規定する2国間及び多数国間の協定を締結するために、希望する連合国とすみやかに交渉を開始するものとする。
(中国における権益)
第10条 日本国は、1901年9月7日に北京で署名された最終議定書並びにこれを補足するすべての附属書、書簡及び文書の規定から生ずるすべての利得及び特権を含む中国におけるすべての特殊の権利及び利益を放棄し、且つ、前記の議定書、附属書、書簡及び文書を日本国に関して廃棄することに同意する。
(戦争犯罪)
第11条 日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。これらの拘禁されている者を赦免し、減刑し、及び仮出獄させる権限は、各事件について刑を課した1又は2以上の政府の決定及び日本国の勧告に基く場合の外、行使することができない。極東国際軍事裁判所が刑を宣告した者については、この権限は、裁判所に代表者を出した政府の過半数の決定及び日本国の勧告に基く場合の外、行使することができない。
(通商航海条約)
第12条 
(a) 日本国は、各連合国と、貿易、海運その他の通商の関係を安定した且つ友好的な基礎の上におくために、条約又は協定を締結するための交渉をすみやかに開始する用意があることを宣言する。
(b) 該当する条約又は協定が締結されるまで、日本国は、この条約の最初の効力発生の後4年間、 
(1) 各連合国並びにその国民、産品及び船舶に次の待遇を与える。
(i) 貨物の輸出入に対する、又はこれに関連する関税、課金、制限その他の規制に関する最恵国待遇
(ii) 海運、航海及び輸入貨物に関する内国民待遇並びに自然人、法人及びその利益に関する内国民待遇。この待遇は、税金の賦課及び徴収、裁判を受けること、契約の締結及び履行、財産権(有体財産及び無体財産に関するもの)、日本国の法律に基いて組織された法人への参加並びに一般にあらゆる種類の事業活動及び職業活動の遂行に関するすべての事項を含むものとする。
(2) 日本国の国営商企業の国外における売買が商業的考慮にのみ基くことを確保する。
(c) もっとも、いずれの事項に関しても、日本国は、連合国が当該事項についてそれぞれ内国民待遇又は最恵国待遇を日本国に与える限度においてのみ、当該連合国に内国民待遇又は最恵国待遇を与える義務を負うものとする。前段に定める相互主義は、連合国の非本土地域の産品、船舶、法人及びそこに住所を有する人の場合並びに連邦政府をもつ連合国の邦又は州の法人及びそこに住所を有する人の場合には、その地域、邦又は州において日本国に与えられる待遇に照らして決定される。
(d) この条の適用上、差別的措置であって、それを適用する当事国の通商条約に通常規定されている例外に基くもの、その当事国の対外的財政状態若しくは国際収支を保護する必要に基くもの(海運及び航海に関するものを除く。)又は重大な安全上の利益を維持する必要に基くものは、事態に相応しており、且つ、ほしいままな又は不合理な方法で適用されない限り、それぞれ内国民待遇又は最恵国待遇の許与を害するものと認めてはならない。
(e) この条に基く日本国の義務は、この条約の第14条に基く連合国の権利の行使によって影響されるものではない。また、この条の規定は、この条約の第15条によって日本国が引き受ける約束を制限するものと了解してはならない。
(国際民間航空)
第13条 
(a) 日本国は、国際民間航空運送に関する2国間又は多数国間の協定を締結するため、1又は2以上の連合国の要請があったときはすみやかに、当該連合国と交渉を開始するものとする。
(b) 1又は2以上の前記の協定が締結されるまで、日本国は、この条約の最初の効力発生の時から4年間、この効力発生の日にいずれかの連合国が行使しているところよりも不利でない航空交通の権利及び特権に関する待遇を当該連合国に与え、且つ、航空業務の運営及び発達に関する完全な機会均等を与えるものとする。
(c) 日本国は、国際民間航空条約第93条に従って同条約の当事国となるまで、航空機の国際航空に適用すべきこの条約の規定を実施し、且つ、同条約の条項に従って同条約の附属書として採択された標準、方式及び手続を実施するものとする。

第5章 請求権及び財産

(賠償、在外財産)
第14条 
(a) 日本国は、戦争中に生じさせた損害及び苦痛に対して、連合国に賠償を支払うべきことが承認される。しかし、また、存立可能な経済を維持すべきものとすれば、日本国の資源は、日本国がすべての前記の損害及び苦痛に対して完全な賠償を行い且つ同時に他の債務を履行するためには現在充分でないことが承認される。よって、 
1 日本国は、現在の領域が日本国軍隊によって占領され、且つ、日本国によって損害を与えられた連合国が希望するときは、生産、沈船引揚げその他の作業における日本人の役務を当該連合国の利用に供することによって、与えた損害を修復する費用をこれらの国に補償することに資するために、当該連合国とすみやかに交渉を開始するものとする。その取極は、他の連合国に追加負担を課することを避けなければならない。また、原材料からの製造が必要とされる場合には、外国為替上の負担を日本国に課さないために、原材料は、当該連合国が供給しなければならない。
2
(I) 次の(II)の規定を留保して、各連合国は、次に掲げるもののすべての財産、権利及び利益でこの条約の最初の効力発生の時にその管轄の下にあるものを差し押え、留置し、清算し、その他何らかの方法で処分する権利を有する。
(a) 日本国及び日本国民
(b) 日本国又は日本国民の代理者又は代行者 並びに
(c) 日本国又は日本国民が所有し、又は支配した団体
この(I)に明記する財産、権利及び利益は、現に、封鎖され、若しくは所属を変じており、又は連合国の敵産管理当局の占有若しくは管理に係るもので、これらの資産が当該当局の管理の下におかれた時に前記の(a)、(b)又は(c)に掲げるいずれかの人又は団体に属し、又はこれらのために保有され、若しくは管理されていたものを含む。
(II) 次のものは、前記の(I)に明記する権利から除く。
(i) 日本国が占領した領域以外の連合国の1国の領域に当該政府の許可を得て戦争中に居住した日本の自然人の財産。但し、戦争中に制限を課され、且つ、この条約の最初の効力発生の日にこの制限を解除されない財産を除く。
(ii) 日本国政府が所有し、且つ、外交目的又は領事目的に使用されたすべての不動産、家具及び備品並びに日本国の外交職員又は領事職員が所有したすべての個人の家具及び用具類その他の投資的性質をもたない私有財産で外交機能又は領事機能の遂行に通常必要であったもの
(iii) 宗教団体又は私的慈善団体に属し、且つ、もっぱら宗教又は慈善の目的に使用した財産
(iv) 関係国と日本国との間における1945年9月2日後の貿易及び金融の関係の再開の結果として日本国の管轄内にはいった財産、権利及び利益。但し、当該連合国の法律に反する取引から生じたものを除く。
(v) 日本国若しくは日本国民の債務、日本国に所在する有体財産に関する権利、権原若しくは利益、日本国の法律に基いて組織された企業に関する利益又はこれらについての証書。但し、この例外は、日本国の通貨で表示された日本国及びその国民の債務にのみ適用する。
(III) 前記の例外(i)から(v)までに掲げる財産は、その保存及び管理のために要した合理的な費用が支払われることを条件として、返還しなければならない。これらの財産が清算されているときは、代りに売得金を返還しなければならない。
(IV) 前記の(I)に規定する日本財産を差し押え、留置し、清算し、その他何らかの方法で処分する権利は、当該連合国の法律に従って行使され、所有者は、これらの法律によって与えられる権利のみを有する。
(V) 連合国は、日本の商標並びに文学的及び美術的著作権を各国の一般的事情が許す限り日本国に有利に取り扱うことに同意する。
(b) この条約に別段の定がある場合を除き、連合国は、連合国のすべての賠償請求権、戦争の遂行中に日本国及びその国民がとった行動から生じた連合国及びその国民の他の請求権並びに占領の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する。
(連合国財産の返還)
第15条 
(a) この条約が日本国と当該連合国との間に効力を生じた後9箇月以内に申請があったときは、日本国は、申請の日から6箇月以内に、日本国にある各連合国及びその国民の有体財産及び無体財産並びに種類のいかんを問わずすべての権利又は利益で、1941年12月7日から1945年9月2日までの間のいずれかの時に日本国内にあったものを返還する。但し、所有者が強迫又は詐欺によることなく自由にこれらを処分した場合は、この限りでない。この財産は、戦争があったために課せられたすべての負担及び課金を免除して、その返還のための課金を課さずに返還しなければならない。所有者により若しくは所有者のために又は所有者の政府により所定の期間内に返還が申請されない財産は、日本国政府がその定めるところに従って処分することができる。この財産が1941年12月7日に日本国に所在し、且つ、返還することができず、又は戦争の結果として損傷若しくは損害を受けている場合には、日本国内閣が1951年7月13日に決定した連合国財産補償法案の定める条件よりも不利でない条件で補償される。
(b) 戦争中に侵害された工業所有権については、日本国は、1949年9月1日施行の政令第309号、1950年1月28日施行の政令第12号及び1950年2月1日施行の政令第9号(いずれも改正された現行のものとする。)によりこれまで与えられたところよりも不利でない利益を引き続いて連合国及びその国民に与えるものとする。但し、前記の国民がこれらの政令に定められた期限までにこの利益の許与を申請した場合に限る。
(c)
(i) 日本国は、公にされ及び公にされなかった連合国及びその国民の著作物に関して1941年12月6日に日本国に存在した文学的及び美術的著作権がその日以後引き続いて効力を有することを認め、且つ、その日に日本国が当事国であった条約又は協定が戦争の発生の時又はその時以後日本国又は当該連合国の国内法によって廃棄され又は停止されたかどうかを問わず、これらの条約及び協定の実施によりその日以後日本国において生じ、又は戦争がなかったならば生ずるはずであった権利を承認する。
(ii) 権利者による申請を必要とすることなく、且つ、いかなる手数料の支払又は他のいかなる手続もすることなく、1941年12月7日から日本国と当該連合国との間にこの条約が効力を生ずるまでの期間は、これらの権利の通常期間から除算し、また、日本国において翻訳権を取得するために文学的著作物が日本語に翻訳されるべき期間からは、6箇月の期間を追加して除算しなければならない。
(非連合国にある日本資産)
第16条 日本国の捕虜であった間に不当な苦難を被った連合国軍隊の構成員に償いをする願望の表現として、日本国は、戦争中中立であった国にある又は連合国のいずれかと戦争していた国にある日本国及びその国民の資産又は、日本国が選択するときは、これらの資産と等価のものを赤十字国際委員会に引き渡すものとし、同委員会は、これらの資産を清算し、且つ、その結果生ずる資金を、同委員会が衡平であると決定する基礎において、捕虜であった者及びその家族のために、適当な国内機関に対して分配しなければならない。この条約の第14条(a)2(II)の(ii)から(v)までに掲げる種類の資産は、条約の最初の効力発生の時に日本国に居住しない日本の自然人の資産とともに、引渡しから除外する。またこの条の引渡規定は、日本国の金融機関が現に所有する1万9770株の国際決済銀行の株式には適用がないものと了解する。
(裁判の再審査)
第17条 
(a) いずれかの連合国の要請があったときは、日本国政府は、当該連合国の国民の所有権に関係のある事件に関する日本国の捕獲審検所の決定又は命令を国際法に従い再審査して修正し、且つ、行われた決定及び発せられた命令を含めて、これらの事件の記録を構成するすべての文書の写を提供しなければならない。この再審査又は修正の結果、返還すべきことが明らかになった場合には、第15条の規定を当該財産に適用する。
(b) 日本国政府は、いずれかの連合国の国民が原告又は被告として事件について充分な陳述ができなかった訴訟手続において、1941年12月7日から日本国と当該連合国との間にこの条約が効力を生ずるまでの期間に日本国の裁判所が行った裁判を、当該国民が前記の効力発生の後1年以内にいつでも適当な日本国の機関に再審査のため提出することができるようにするために、必要な措置をとらなければならない。日本国政府は、当該国民が前記の裁判の結果損害を受けた場合には、その者をその裁判が行われる前の地位に回復するようにし、又はその者にそれぞれの事情の下において公正且つ衡平な救済が与えられるようにしなければならない。
(戦前からの債務)
第18条 
(a) 戦争状態の介在は、戦争状態の存在前に存在した債務及び契約(債券に関するものを含む。)並びに戦争状態の存在前に取得された権利から生ずる金銭債務で、日本国の政府若しくは国民が連合国の1国の政府若しくは国民に対して、又は連合国の1国の政府若しくは国民が日本国の政府若しくは国民に対して負っているものを支払う義務に影響を及ぼさなかったものと認める。戦争状態の介在は、また、戦争状態の存在前に財産の滅失若しくは損害又は身体傷害若しくは死亡に関して生じた請求権で、連合国の1国の政府が日本国政府に対して、又は日本国政府が連合国政府のいずれかに対して提起し又は再提起するものの当否を審議する義務に影響を及ぼすものとみなしてはならない。この項の規定は、第14条によって与えられる権利を害するものではない。
(b) 日本国は、日本国の戦前の対外債務に関する責任と日本国が責任を負うと後に宣言された団体の債務に関する責任とを確認する。また、日本国は、これらの債務の支払再開に関して債権者とすみやかに交渉を開始し、他の戦前の請求権及び債務に関する交渉を促進し、且つ、これに応じて金額の支払を容易にする意図を表明する。
(戦争請求権の放棄)
第19条 
(a) 日本国は、戦争から生じ、又は戦争状態が存在したためにとられた行動から生じた連合国及びその国民に対する日本国及びその国民のすべての請求権を放棄し、且つ、この条約の効力発生の前に日本国領域におけるいずれかの連合国の軍隊又は当局の存在、職務遂行又は行動から生じたすべての請求権を放棄する。
(b) 前記の放棄には、1939年9月1日からこの条約の効力発生までの間に日本国の船舶に関していずれかの連合国がとった行動から生じた請求権並びに連合国の手中にある日本人捕虜及び被抑留者に関して生じた請求権及び債権が含まれる。但し、1945年9月2日以後いずれかの連合国が制定した法律で特に認められた日本人の請求権を含まない。
(c) 相互放棄を条件として、日本国政府は、また、政府間の請求権及び戦争中に受けた滅失又は損害に関する請求権を含むドイツ及びドイツ国民に対するすべての請求権(債権を含む。)を日本国政府及び日本国民のために放棄する。但し、(a)1939年9月1日前に締結された契約及び取得された権利に関する請求権並びに(b)1945年9月2日後に日本国とドイツとの間の貿易及び金融の関係から生じた請求権を除く。この放棄は、この条約の第16条及び第20条に従ってとられる行動を害するものではない。
(d) 日本国は、占領期間中に占領当局の指令に基いて若しくはその結果として行われ、又は当時の日本国の法律によって許可されたすべての作為又は不作為の効力を承認し、連合国民をこの作為又は不作為から生ずる民事又は刑事の責任に問ういかなる行動もとらないものとする。
(ドイツ財産)
第20条 日本国は、1945年のベルリン会議の議事の議定書に基いてドイツ財産を処分する権利を有する諸国が決定した又は決定する日本国にあるドイツ財産の処分を確実にするために、すべての必要な措置をとり、これらの財産の最終的処分が行われるまで、その保存及び管理について責任を負うものとする。
(中国と朝鮮の受益権)
第21条 この条約の第25条の規定にかかわらず、中国は、第10条及び第14条(a)2の利益を受ける権利を有し、朝鮮は、この条約の第2条、第4条、第9条及び第12条の利益を受ける権利を有する。

第6章 紛争の解決

(条約の解釈)
第22条 この条約のいずれかの当事国が特別請求権裁判所への付託又は他の合意された方法で解決されない条約の解釈又は実施に関する紛争が生じたと認めるときは、紛争は、いずれかの紛争当事国の要請により、国際司法裁判所に決定のため付託しなければならない。日本国及びまだ国際司法裁判所規程の当事国でない連合国は、それぞれがこの条約を批准する時に、且つ、1946年10月15日の国際連合安全保障理事会の決議に従って、この条に掲げた性質をもつすべての紛争に関して一般的に同裁判所の管轄権を特別の合意なしに受諾する一般的宣言書を同裁判所書記に寄託するものとする。

第7章 最終条項

(批准)
第23条 
(a) この条約は、日本国を含めて、これに署名する国によって批准されなければならない。この条約は、批准書が日本国により、且つ、主たる占領国としてのアメリカ合衆国を含めて、次の諸国、すなわちオーストラリア、カナダ、セイロン、フランス、インドネシア、オランダ、ニュー・ジーランド、パキスタン、フィリピン、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国の過半数により寄託された時に、その時に批准しているすべての国に関して効力を生ずる。この条約は、その後これを批准する各国に関しては、その批准書の寄託の日に効力を生ずる。
(b) この条約が日本国の批准書の寄託の日の後9箇月以内に効力を生じなかったときは、これを批准した国は、日本国の批准書の寄託の日の後3年以内に日本国政府及びアメリカ合衆国政府にその旨を通告して、自国と日本国との間にこの条約の効力を生じさせることができる。
(批准書の寄託)
第24条 すべての批准書は、アメリカ合衆国政府に寄託しなければならない。同政府は、この寄託、第23条(a)に基くこの条約の効力発生の日及びこの条約の第23条(b)に基いて行われる通告をすべての署名国に通告する。
(連合国の定義)
第25条 この条約の適用上、連合国とは、日本国と戦争していた国又は以前に第23条に列記する国の領域の一部をなしていたものをいう。但し、各場合に当該国がこの条約に署名し且つこれを批准したことを条件とする。第21条の規定を留保して、この条約は、ここに定義された連合国の1国でないいずれの国に対しても、いかなる権利、権原又は利益も与えるものではない。また、日本国のいかなる権利、権原又は利益も、この条約のいかなる規定によっても前記のとおり定義された連合国の1国でない国のために減損され、又は害されるものとみなしてはならない。
(2国間の平和条約)
第26条 日本国は、1942年1月1日の連合国宣言に署名し若しくは加入しており且つ日本国に対して戦争状態にある国又は以前に第23条に列記する国の領域の一部をなしていた国で、この条約の署名国でないものと、この条約に定めるところと同一の又は実質的に同一の条件で2国間の平和条約を締結する用意を有すべきものとする。但し、この日本国の義務は、この条約の最初の効力発生の後3年で満了する。日本国が、いずれかの国との間で、この条約で定めるところよりも大きな利益をその国に与える平和処理又は戦争請求権処理を行ったときは、これと同一の利益は、この条約の当事国にも及ぼされなければならない。
(条約文の保管)
第27条 この条約は、アメリカ合衆国政府の記録に寄託する。同政府は、その認証謄本を各署名国に交付する。
以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。
1951年9月8日にサン・フランシスコ市で、ひとしく正文である英語、フランス語及びスペイン語により、並びに日本語により作成した。
アルゼンティンのために
イポリト・J・パス
オーストラリアのために
パーシー・C・スペンダー
ベルギー王国のために
ポール・ヴァン・ゼラン
シルヴェルクリュイ
ボリビアのために
ルイス・ガチャリャ
ブラジルのために
カルロス・マルティンス
A・デ・メルロ=フランコ
カンボディアのために
フレン
カナダのために
レスター・B・ピアソン
R・W・メイヒュー
セイロンのために
J・R・ジャイェワルデネ
G・C・S・コレア
R・G・セナナヤケ
チリのために
F・ニエト・デル・リオ
コロンビアのために
シプリアノ・レストレポ=ハラミリョ
セバスティアン・オスピナ
コスタ・リカのために
J・ラファエル・オレアムノ
V・バルガス
ルイス・ドブレス・サンチェス
キュバのために
O・ガンス
L・マチャド
ホアキン・メイエル
ドミニカ共和国のために
V・オルドネス
ルイス・F・トメン
エクアドルのために
A・ケベド
R・G・バレンスエラ
エジプトのために
カミル・A・ラヒム
サルヴァドルのために
エクトル・ダビド・カストロ
ルイス・リバス・パラシオス
エティオピアのために
メン・ヤイェヒラド
フランスのために
シューマン
H・ボネ
ポール=エミール・ナギアール
ギリシャのために
A・G・ポリティス
グァテマラのために
E・カスティリョ・A
A・M・オレリャナ
J・メンドサ
ハイティのために
ジャック・N・レジェ
G・ララク
ホンデュラスのために
J・E・バレンスエラ
ロベルト・ガルベス・B
ラウル・アルバラド・T
インドネシアのために
アーマッド・スバルヂョ
イランのために
A・G・アルダラン
イラークのために
A・I・バクル
ラオスのために
サヴァン
レバノンのために
シャルル・マリク
リベリアのために
ガブリェル・L・デニス
ジェームズ・アンダーソン
レーモンド・ホラス
J・ルドルフ・グライムズ
ルクセンブルグ大公国のために
ユーグ・ル・ガレ
メキシコのために
ラファエル・デ・ラ・コリナ
グスタボ・ディアス・オルダス
A・P・ガスガ
オランダ王国のために
D・U・スティッケル
J・H・ヴァン・ロイエン
ニュー・ジーランドのために
C・ベレンドセン
ニカラグァのために
G・セビリャ・サカサ
グスタボ・マンサナレス
ノールウェー王国のために
ヴィルヘルム・ムンテ・モルゲンスティールネ
パキスタンのために
ザフルラ・カーン
パナマのために
イグシオ・モリノ
ホセ・A・レモン
アルフレド・アレマン
J・コルドベス
パラグァイのために
ルイス・オスカル・ベットネル
ペルーのために
F・ベルクメイエル
フィリピン共和国のために
カルロス・P・ロムロ
J・M・エリサルデ
ビセンテ・エリサルデ
ビセンテ・フランシスコ
ディオスダド・マカパガル
エミリアノ・T・ティロナ
V・G・シンコ
サウディ・アラビアのために
アサッド・アル=ファキー
シリアのために
F・エル=クーリ
トルコ共和国のために
フェリドゥン・C・エルキン
南アフリカ連邦のために
G・P・ジュースト
グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国のために
ハーバート・モリソン
ケネス・ヤンガー
オリヴァー・フランクス
アメリカ合衆国のために
ディーン・アチソン
ジョーン・フォスター・ダレス
アレキサンダー・ワイリー
ジョーン・J・スパークマン
ウルグァイのために
ホセ・A・モラ
ヴェネズエラのために
アントニオ・M・アラウホ
R・ガリェゴス・M
ヴィエトナムのために
T・V・フウ
T・ヴィン
D・タン
ブウ・キン
日本国のために
吉田茂
池田勇人
苫米地義3
星島2郎
徳川宗敬
1萬田尙登
議定書
昭和26年9月8日サン・フランシスコ市で署名
昭和27年4月28日効力発生
昭和27年4月28日公布(条約第5号)
下名は、このために正当に権限を与えられて、日本国との平和が回復した時に契約、時効期間及び流通証券の問題並びに保険契約の問題を律するために、次の規定を協定した。
契約、時効及び流通証券
A 契約
1 Fに定める敵人となったいずれかの当事者の間でその履行のため交渉を必要とした契約は、いずれかの契約当事者が敵人となった時に解除されたものとみなす。但し、次の第2項及び第3項に掲げる例外については、この限りでない。もっとも、この解除は、本日署名された平和条約の第15条及び第18条の規定を害するものではなく、また、契約の当事者に対しては、前渡金又は内金として受領され、且つ、その当事者が反対給付を行わなかった金額を払いもどす義務を免除するものではない。
2 分割することができ、且つ、Fに定める敵人となったいずれかの当事者の間で履行のため交渉を必要としなかった契約の一部は、前項の規定にかかわらず、解除されないものとし、且つ、本日署名された平和条約の第14条に含まれる権利を害することなく、引き続いて有効とする。契約の規定がこのように分割することができない場合には、その契約は、全体として解除されたものとみなす。前記は、この議定書の署名国で、平和条約にいう連合国であり且つ当該契約又はいずれかの契約当事者に対し管轄権を有するものによって制定された国内の法律、命令又は規則の適用を受け、且つ、当該契約の条項に従うものとする。
3 Aの規定は、敵人間の契約に従って適法に行われた取引がこの議定書の署名国で平和条約にいう連合国であるものの政府たる関係政府の許可を得て行われたときは、当該取引を無効にするものとみなしてはならない。
4 前記の規定にかかわらず、保険契約及び再保険契約は、この議定書のD及びEの規定に従って取り扱う。
B 時効期間
1 人又は財産に影響する関係で、戦争状態のために自己の権利を保全するのに必要な訴訟行為又は必要な手続をすることができなかったこの議定書の署名国の国民に係るものについて訴の提起又は保存措置をする権利に関するすべての時効期間又は制限期間は、この期間が戦争の発生の前に進行し始めたか又は後に進行し始めたかを問わず、一方日本国の領域において、他方この項の規定の利益を相互主義によって日本国に与える署名国の領域において、戦争の継続中その進行を停止されたものとみなす。これらの期間は、本日署名された平和条約の効力発生の日から再び進行し始める。この項の規定は、利札若しくは配当金受領証の呈示について、又は償還のための抽せんに当せんした有価証券若しくは他の何らかの理由で償還される有価証券の支払を受けるための呈示について定められた期間に適用する。但し、これらの利札又は有価証券に関しては、期間は、利札又は有価証券の保有者に対して金額を支払うことができるようになった日から再び進行し始めるものとする。
2 戦争中に何らかの行為をせず、又は何らかの手続をしなかったために処分が日本国の領域において行われた場合において、この議定書の署名国で平和条約にいう連合国であるものの1国の国民に損害を与えるに至ったときは、日本国政府は、損害を生じた権利を回復しなければならない。この回復が不可能又は不衡平である場合には、日本国政府は、関係署名国の国民にそれぞれの事情の下において公正且つ衡平な救済が与えられるようにしなければならない。
C 流通証券
1 敵人間においては、戦前に作成された流通証券は、戦争中に、引受若しくは支払のための証券の呈示、振出人若しくは裏書人への引受拒絶若しくは支払拒絶の通知又は拒絶証書の作成を所要の期間内にしなかったことだけを理由として、あるいは戦争中に何らかの手続を完了しなかったことを理由として無効となったものとみなしてはならない。
2 流通証券が引受若しくは支払のために呈示され、引受拒絶若しくは支払拒絶の通知が振出人若しくは裏書人に与えられ、又は拒絶証書が作成されなければならない期間が戦争中に経過し、且つ、証券を呈示し、拒絶証書を作成し、又は引受拒絶若しくは支払拒絶の通知を与えなければならない当事者が戦争中にそれを行わなかった場合には、呈示し、引受拒絶若しくは支払拒絶の通知を与え、又は拒絶証書を作成することができるように、本日署名された平和条約の効力発生の日から3箇月以上の期間が与えられなければならない。
3 何人かが、戦争前又は戦争中に、後に敵人となった者から与えられた約束の結果として、流通証券に基く債務を負ったときは、後者は、戦争の発生にかかわらず、この債務に関して前者に補償する責任を引き続いて負わなければならない。
D 当事者が敵人となった日の前に終了していなかった保険契約及び再保険契約(生命保険を除く。)
1 保険契約は、当事者が敵人となったという事実によっては解除されなかったものとみなす。但し、当事者が敵人となった日の前に保険責任が開始しており、且つ、保険契約者がその日の前に契約に従って保険を成立させ又はその効力を維持するための保険料として支払うべきすべての金額を支払ったことを条件とする。
2 前項に基いて引き続き効力を有しているもの以外の保険契約は、存在しなかったものとみなし、これに基いて支払われた金額は、返済しなければならない。
3 以下に明文の規定がある場合を除き、特約再保険その他の再保険契約は、当事者が敵人となった日に終了したものとみなし、且つ、これに基くすべての出再保険契約は、その日に取り消されたものとする。但し、特約海上再保険に基いて開始された航海保険に関する出再保険契約は、再保険された条件に従って自然に終了するまで引き続いて完全に効力を有したものとみなす。
4 任意再保険契約は、保険責任が開始しており、且つ、再保険を成立させ又はその効力を維持するための保険料として支払うべきすべての金額が通例の方法で支払われ、又は相殺された場合には、再保険契約に別段の定がない限り、当事者が敵人となった日まで引き続いて完全に効力を有し、且つ、その日に終了したものとみなす。もっとも、航海保険については、この任意再保険は、再保険された条件に従って自然に終了するまで引き続いて完全に効力を有したものとみなす。更に、前記の1に基いて引き続き効力を有している保険契約に関する任意再保険は、元受保険の期間満了まで引き続いて完全に効力を有したものとみなす。
5 前項で取り扱ったもの以外の任意再保険契約並びに「超過損害率」に基く超過損害再保険及び雹害再保険(任意契約であるかどうかを問わない。)のすべての契約は、存在しなかったものとみなし、これらに基いて支払われた金額は、返済しなければならない。
6 特約再保険その他の再保険契約に別段の定がない場合には、保険料は、経過期間に比例して清算しなければならない。
7 保険契約又は再保険契約(特約再保険に基く出再保険契約を含む。)は、いずれかの当事者が国民であったいずれかの国又はその国の連合国若しくは同盟国による交戦行為に基く損害又は請求権を担保しないものとみなす。
8 保険が戦争中に原保険者から他の保険者に移転された場合又は全額再保険された場合には、その移転又は再保険は、自発的に行われたか又は行政若しくは立法の措置によって行われたかを問わず、有効と認め、原保険者の責任は、移転又は再保険の日に消滅したものとみなす。
9 同一の両当事者間に2以上の特約再保険その他の再保険契約があった場合には、両当事者間の勘定を清算するものとし、その結果生ずる残高を確定するために、その勘定には、すべての残高(未払の損害に対する合意した準備金を含む。)及びこのようなすべての契約に基いて1当事者から他の当事者に支払うべきすべての金額又は前記の諸規定のいずれかによって返済されるべきすべての金額を算入しなければならない。
10 当事者が敵人となったために保険料、請求権又は勘定残高の決済に当って生じた又は生ずる延滞については、いずれの当事者も、利息の支払を要しないものとする。
11 この議定書のDの規定は、本日署名された平和条約の第14条によって与えられる権利を害し又はこれに影響を及ぼすものではない。
E 生命保険契約
保険が戦争中に原保険者から他の保険者に移転された場合又は全額再保険された場合には、その移転又は再保険は、日本国の行政機関又は立法機関の要求によって行われたものであるときは、有効と認め、原保険者の責任は、移転又は再保険の日に消滅したものとみなす。
F 特別規定
この議定書の適用上、自然人又は法人は、これらの者の間で取引をすることがこれらの者又は当該契約が従っていた法律、命令又は規則に基いて違法となった日から敵人とみなす。
最終条項
この議定書は、日本国及び本日署名された日本国との平和条約の署名国による署名のために開放され、且つ、この議定書が取り扱う事項について、日本国とこの議定書の署名国である他の各国との間の関係を、日本国及び当該署名国の双方が平和条約によって拘束される日から律するものとする。この議定書は、アメリカ合衆国政府の記録に寄託する。同政府は、その認証謄本を各署名国に交付する。
以上の証拠として、下名の全権委員は、この議定書に署名した。
1951年9月8日にサン・フランシスコ市で、ひとしく正文である英語、フランス語及びスペイン語により、並びに日本語により作成した。
オーストラリアのために
パーシー・C・スペンダー
ベルギー王国のために
ポール・ヴァン・ゼラン
シルヴェルクリュイ
カンボディアのために
フレン
カナダのために
レスター・B・ピアソン
R・W・メイヒュー
セイロンのために
J・R・ジャイェワルデネ
G・C・S・コレア
R・G・セナナヤケ
ドミニカ共和国のために
V・オルドネス
ルイス・F・トメン
エジプトのために
カミル・A・ラヒム
エティオピアのために
メン・ヤイェヒラド
フランスのために
シューマン
H・ボネ
ポール=エミール・ナギアール
ギリシャのために
A・G・ポリティス
ハイティのために
ジャック・N・レジェ
G・ララク
インドネシアのために
アーマッド・スバルヂョ
イランのために
A・G・アルダラン
イラークのために
A・I・バルク
ラオスのために
サヴァン
レバノンのために
シャルル・マリク
リベリアのために
ガブリエル・L・デニス
ジェームズ・アンダーソン
レーモンド・ホラス
J・ルドルフ・グライムズ
ルクセンブルグ大公国のために
ユーグ・ル・ガレ
オランダ王国のために
D・U・スティッケル
J・H・ヴァン・ロイエン
パキスタンのために
ザフルラ・カーン
サウディ・アラビアのために
アサッド・アル=ファキー
シリアのために
F・エル=クーリ
トルコ共和国のために
フェリドゥン・C・エルキン
グレート・ブリテン北部アイルランド連合王国のために
ハーバード・モリソン
ケネス・ヤンガー
オリヴァー・フランクス
ウルグァイのために
ホセ・A・モラ
ヴィエトナムのために
T・V・フウ
T・ヴィン
D・タン
ブウ・キン
日本国のために
吉田茂
池田勇人
苫米地義3
星島2郎
徳川宗敬
1萬田尙登
宣言
昭和26年9月8日サン・フランシスコ市で署名
昭和27年4月28日効力発生
昭和27年4月8日公布(条約第5号)
本日署名された平和条約に関して、日本国政府は、次の宣言を行う。
1 この平和条約に別段の定がある場合を除き、日本国は、現に有効なすべての多数国間の国際文書で1939年9月1日に日本国が当事国であったものが完全に効力を有することを承認し、且つ、平和条約の最初の効力発生の時にこれらの文書に基くすべての権利及び義務を回復することを宣言する。但し、いずれかの文書の当事国であるために日本国が1939年9月1日行こう加盟国でなくなった国際機関の加盟国であることを必要とする場合には、この項の規定は、日本国の当該機関への再加盟をまって効力を生ずるものとする。
2 日本国政府は、実行可能な最短期間内に、且つ、平和条約の最初の効力発生の後1年以内に、次の国際文書に正式に加入する意思を有する。
(1) 1912年1月23日、1925年2月11日、1925年2月19日、1931年7月13日、1931年11月27日及び1936年6月26日の麻薬に関する協定、条約及び協議書を改正する1946年12月11日にレーク・レクサスで署名のために開放された協議書
(2) 1946年12月11日にレーク・レクサスで署名された議定書によって改正された麻薬の製造制限及び分配取締に関する1931年7月13日の条約の範囲外の薬品を国際統制の下におく1948年11月19日にパリで署名のために開放された議定書
(3) 1927年9月26日にジュネーヴで署名された外国の仲裁判決の執行に関する国際条約
(4) 1928年12月14日にジュネーヴで署名された経済統計に関する国際条約及び議定書並びに1928年の経済統計に関する国際条約を改正する1948年12月9日にパリで署名された議定書
(5) 1923年11月3日にジュネーヴで署名された税関手続の簡易化に関する国際条約及び署名議定書
(6) 1911年6月2日にワシントンで、1925年11月6日にヘーグで、及び1934年6月2日にロンドンで修正された貨物の原産地虚偽表示の防止に関する1891年4月14日のマドリッド協定
(7) 1929年10月12日にワルソーで署名された国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約及び追加議定書
(8) 1948年6月10日にロンドンで署名のために開放された海上における人命の安全に関する条約
(9) 1949年8月12日の戦争犠牲者の保護に関するジュネーヴ諸条約
3 日本国政府は、また、平和条約の最初の効力発生の後6箇月以内に、 
(a) 1944年12月7日にシカゴで署名のために開放された国際民間航空条約への参加の承認を申請し、且つ、日本国がその条約の当事国となった後なるべくすみやかに、同じく1944年12月7日にシカゴで署名のために開放された国際航空業務通過協定を受諾し、及び 
(b) 1947年10月11日ワシントンで署名のために開放された世界気象機関条約への参加の承認を申請する意思を有する。
1951年9月8日にサン・フランシスコ市で作成した。
吉田茂
池田勇人
苫米地義3
星島2郎
徳川宗敬
1萬田尙登
宣言
本日署名された平和条約に関して、日本国政府は、次の宣言を行う。
日本国は、いずれかの連合国によって日本国の領域にある当該国の戦死者の墓、墓地及び記念碑を識別し、一覧表にし、維持し、又は整理する権原を与えられた委員会、代表団その他の機関を承認し、このような機関の事業を容易にし、且つ、前記の戦死者の墓、墓地及び記念碑に関して、当該連合国又は当該連合国によって権限を与えられた委員会、代表団その他の機関と、必要とされる協定を締結するために交渉を開始する。
日本国は、連合国が、連合国の領域にあり且つ保存を希望される日本人の戦死者の墓又は墓地を維持する為に取極をする目的をもって、日本国政府との協議を開始すべきことを信ずる。
1951年9月8日にサン・フランシスコ市で作成した。
吉田茂
池田勇人
苫米地義3
星島2郎
徳川宗敬
1萬田尙登
締約国一覧表
(昭和37年、1、5調)
国名 批准書寄託の日 効力発生の日
アルゼンティン 1952、4、9 1952、4、28
オーストラリア 1952、4、10 1952、8、28
ベルギー 1952、8、22 1952、8、22
ブラジル 1952、5、20 1952、5、20
カンボディア 1952、6、2 1952、6、2
カナダ 1952、4、17 1952、4、28
セイロン 1952、4、28 1952、4、28
チリ 1954、4、28 1954、4、28
コスタ・リカ 1952、9、17 1952、9、17
キューバ 1951、8、12 1952、8、12
ドミニカ 1952、6、6 1952、6、6
エクアドル 1955、12、27 1955、12、27
エル・サルヴァドル 1952、5、6 1952、5、6
エティオピア 1952、6、12 1952、6、12
フランス 1952、4、18 1952、4、28
ギリシャ 1953、5、19 1953、5、19
グァテマラ 1954、9、23 1954、9、23
ハイティ 1953、5、1 1953、5、1
ホンデュラス 1953、9、4 1953、9、4
イラン 1956、8、29 1956、8、29
イラク 1955、8、18 1955、8、18
日本国 1951、11、28 1952、4、28
ラオス 1952、6、20 1952、6、20
レバノン 1954、1、7 1954、1、7
リベリア 1952、12、29 1952、12、29
メキシコ 1952、3、3 1952、4、28
オランダ 1952、6、17 1952、6、17
ニュー・ジーランド 1952、4、10 1952、4、28
ニカラグァ 1952、11、4 1952、11、4
ノールウェー 1952、6、19 1952、6、19
パキスタン 1952、4、17 1952、4、28
パナマ 1953、4、10 1953、4、10
パラグァイ 1952、1、15 1952、1、15
ペルー 1952、6、17 1952、6、17
フィリピン 1956、7、23 1956、7、23
サウディ・アラビア 1954、3、13 1954、3、13
シリア 1952、12、29 1952、12、29
トルコ 1952、7、24 1952、7、24


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