はんざいひがいざいさんとうによるひがいかいふくきゅうふきんのしきゅうにかんするほうりつ
犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律
平成18年法律第87号
第1章 総則
(目的)
第1条 この法律は、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成11年法律第136号。以下「組織的犯罪処罰法」という。)第13条第2項各号に掲げる罪の犯罪行為(以下「対象犯罪行為」という。)により財産的被害を受けた者に対して、没収された犯罪被害財産、追徴されたその価額に相当する財産及び外国譲与財産により被害回復給付金を支給することによって、その財産的被害の回復を図ることを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 犯罪被害財産 組織的犯罪処罰法第13条第2項に規定する犯罪被害財産をいう。
二 被害回復給付金 給付資金から支給される金銭であって、支給対象犯罪行為により失われた財産の価額を基礎として次章第2節又は第3節の規定によりその金額が算出されるものをいう。
三 給付資金 組織的犯罪処罰法第13条第3項の規定により没収された犯罪被害財産の換価若しくは取立てにより得られた金銭(当該犯罪被害財産が金銭であるときは、その金銭)、組織的犯罪処罰法第16条第2項の規定により追徴された犯罪被害財産の価額に相当する金銭又は第36条第1項の規定による外国譲与財産の換価若しくは取立てにより得られた金銭(当該外国譲与財産が金銭であるときは、その金銭)であって、検察官が保管するものをいう。
四 支給対象犯罪行為 第5条第1項又は第35条第1項の規定によりその範囲が定められる対象犯罪行為をいう。
五 外国犯罪被害財産等 外国の法令による裁判又は命令その他の処分により没収された財産又は追徴された価額に相当する金銭(日本国の裁判所が言い渡した組織的犯罪処罰法第13条第3項の規定による犯罪被害財産の没収の確定裁判の執行として没収された財産及び組織的犯罪処罰法第16条第2項の規定による犯罪被害財産の価額の追徴の確定裁判の執行として追徴された価額に相当する金銭を除く。)であって、日本国の法令によれば対象犯罪行為によりその被害を受けた者から得た財産若しくは当該財産の保有若しくは処分に基づき得た財産又はそれらの価額に相当する金銭に当たるものをいう。
六 外国譲与財産 外国犯罪被害財産等又はその換価若しくは取立てにより得られた金銭であって、外国から譲与を受けたものをいう。
七 費用 この法律の規定による公告及び通知に要する費用その他の給付資金から支弁すべきものとして法務省令で定める費用をいう。
八 費用等 費用及び第26条第1項(第39条において準用する場合を含む。)に規定する被害回復事務管理人の報酬をいう。
第2章 被害回復給付金の支給
第1節 通則
(被害回復給付金の支給)
第3条 国は、この法律の定めるところにより、支給対象犯罪行為により害を被った者(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)であってこれにより財産を失ったものに対し、被害回復給付金を支給する。
2 国は、前項に規定する者(以下「対象被害者」という。)について、相続その他の一般承継があったときは、この法律の定めるところにより、その相続人その他の一般承継人に対し、被害回復給付金を支給する。
(被害回復給付金の支給を受けることができない者)
第4条 前条の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する者は、被害回復給付金の支給を受けることができない。
一 支給対象犯罪行為により失われた財産(当該財産が2人以上の者の共有に属するときは、その持分。以下この条、第9条第1項第2号及び第3号並びに第10条第2項において同じ。)の価額に相当する損害の全部について、そのてん補又は賠償がされた場合(当該支給対象犯罪行為により当該財産を失った対象被害者又はその一般承継人以外の者により当該てん補又は賠償がされた場合に限る。)における当該支給対象犯罪行為により当該財産を失った対象被害者又はその一般承継人
二 支給対象犯罪行為を実行した者若しくはこれに共犯として加功した者、支給対象犯罪行為に関連して不正な利益を得た者、支給対象犯罪行為により財産を失ったことについて自己に不法な原因がある者その他被害回復給付金の支給を受けることが社会通念上適切でない者又は対象被害者がこれらの者のいずれかに該当する場合におけるその一般承継人
第2節 犯罪被害財産支給手続
第1款 手続の開始等
(支給対象犯罪行為の範囲を定める処分等)
第5条 検察官は、犯罪被害財産の没収又はその価額の追徴の裁判が確定したときは、支給対象犯罪行為の範囲を定めなければならない。
2 前項に規定する支給対象犯罪行為の範囲は、次に掲げる対象犯罪行為について、その罪の種類、時期及び態様、これを実行した者、犯罪被害財産の形成の経緯その他の事情を考慮して定めるものとする。
一 犯罪被害財産の没収又はその価額の追徴の理由とされた事実に係る対象犯罪行為及びこれと一連の犯行として行われた対象犯罪行為
二 犯罪被害財産の没収又はその価額の追徴の理由とされた事実に係る犯罪行為が対象犯罪行為によりその被害を受けた者から得た財産に関して行われたものである場合における当該対象犯罪行為及びこれと一連の犯行として行われた対象犯罪行為
3 検察官は、前2項の規定により支給対象犯罪行為の範囲を2以上に区分して定めたときは、その範囲ごとに、第1項に規定する没収の裁判で示された犯罪被害財産(1の犯罪被害財産が異なる支給対象犯罪行為の範囲に属する対象犯罪行為によりその被害を受けた者から得た財産又は当該財産の保有若しくは処分に基づき得た財産から形成されたものであって額又は数量により区分することができないものである場合においては、当該犯罪被害財産の換価又は取立てにより得られる金銭の価額)又は同項に規定する追徴の裁判で示された犯罪被害財産の価額を区分するものとする。
(犯罪被害財産支給手続の開始)
第6条 検察官は、前条第1項に規定する裁判で示された犯罪被害財産又はその価額について、これを給付資金として保管するに至ったときは、遅滞なく、当該給付資金から被害回復給付金を支給するための手続(以下「犯罪被害財産支給手続」という。)を開始する旨の決定をするものとする。ただし、その時点における給付資金をもっては犯罪被害財産支給手続に要する費用等を支弁するのに不足すると認めるとき、その他その時点においては犯罪被害財産支給手続を開始することが相当でないと認めるときは、この限りでない。
2 検察官は、外国から前条第1項に規定する裁判の執行として没収された財産若しくはその換価若しくは取立てにより得られた金銭又は当該裁判の執行として追徴された価額に相当する金銭の譲与を受けるため特に必要があると認めるときは、前項本文の規定にかかわらず、これを給付資金として保管する前に、犯罪被害財産支給手続を開始する旨の決定をすることができる。
3 前2項の決定は、前条第3項に規定する場合にあっては、支給対象犯罪行為の範囲ごとにするものとする。
4 検察官は、確定した2以上の犯罪被害財産の没収又はその価額の追徴の裁判について前条第1項の規定により定められた支給対象犯罪行為の範囲が同一であるときは、これらの裁判で示された犯罪被害財産又はその価額(既に犯罪被害財産支給手続が開始されているものを除く。)を同一の裁判で示された犯罪被害財産又はその価額とみなして、第1項又は第2項の決定をすることができる。
(公告等)
第7条 検察官は、犯罪被害財産支給手続を開始する旨の決定をしたときは、直ちに、次に掲げる事項(前条第2項の規定により犯罪被害財産支給手続を開始した場合にあっては、第4号に掲げる事項を除く。)を官報に掲載して公告しなければならない。
一 犯罪被害財産支給手続を開始した旨
二 犯罪被害財産支給手続を行う検察官が所属する検察庁
三 支給対象犯罪行為の範囲
四 当該決定の時における給付資金の額
五 支給申請期間
六 その他法務省令で定める事項
2 前項第5号に掲げる支給申請期間は、同項の規定による公告があった日の翌日から起算して30日以上でなければならない。
3 検察官は、対象被害者又はその一般承継人であって知れているものに対し、第1項の規定により公告すべき事項を通知しなければならない。ただし、被害回復給付金の支給を受けることができない者であることが明らかである者については、この限りでない。
4 前3項に規定するもののほか、第1項の規定による公告及び前項の規定による通知に関し必要な事項は、法務省令で定める。
(犯罪被害財産支給手続の不開始)
第8条 検察官は、犯罪被害財産支給手続に要する費用等を支弁するのに足りる給付資金を保管することとなる見込みがないと認めるときは、犯罪被害財産支給手続を開始しない旨の決定をするものとする。
2 検察官は、前項の決定をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨を公告しなければならない。
第2款 支給の申請及び裁定等
(支給の申請)
第9条 被害回復給付金の支給を受けようとする者は、支給申請期間内に、法務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書に第1号及び第2号に掲げる事項を疎明するに足りる資料を添付して、検察官に申請をしなければならない。
一 申請人が対象被害者又はその一般承継人であることの基礎となる事実
二 支給対象犯罪行為により失われた財産の価額
三 控除対象額(支給対象犯罪行為により失われた財産の価額に相当する損害について、そのてん補又は賠償がされた場合(当該支給対象犯罪行為により当該財産を失った対象被害者又はその一般承継人以外の者により当該てん補又は賠償がされた場合に限る。)における当該てん補額及び賠償額を合算した額をいう。以下同じ。)
四 その他法務省令で定める事項
2 前項の規定による申請をした対象被害者について、当該申請に対する次条又は第11条の規定による裁定が確定するまでの間に一般承継があったときは、当該対象被害者の一般承継人は、支給申請期間が経過した後であっても、当該一般承継があった日から60日以内に限り、被害回復給付金の支給の申請をすることができる。この場合において、当該一般承継人は、法務省令で定めるところにより、同項に規定する申請書に同項第1号及び第2号に掲げる事項を疎明するに足りる資料を添付して、これを検察官に提出しなければならない。
3 前2項の規定による申請その他この法律に基づく手続を代理人によりしようとする者は、法定代理人により手続をしようとする場合を除き、弁護士(弁護士法人を含む。)を代理人としなければならない。
(裁定)
第10条 検察官は、前条第1項の規定による申請があった場合において、支給申請期間が経過したとき(その時点において、第5条第1項の規定による支給対象犯罪行為の範囲を定める処分が確定していないときは、当該処分が確定したとき)は、遅滞なく、その申請人が被害回復給付金の支給を受けることができる者に該当するか否かの裁定をしなければならない。前条第2項の規定による申請があった場合において、当該申請に係る一般承継があった日から60日が経過したとき(その時点において、第5条第1項の規定による支給対象犯罪行為の範囲を定める処分が確定していないときは、当該処分が確定したとき)も、同様とする。
2 検察官は、被害回復給付金の支給を受けることができる者に該当する旨の裁定(以下「資格裁定」という。)をするに当たっては、その犯罪被害額(支給対象犯罪行為により失われた財産の価額から控除対象額を控除して検察官が定める額をいう。以下同じ。)を定めなければならない。この場合において、資格裁定を受ける者で次の各号に掲げる者に該当するものが2人以上ある場合におけるその者に係る犯罪被害額は、当該各号に定める額とする。
一 同一の支給対象犯罪行為により同一の財産を失った対象被害者又はその一般承継人 当該財産の価額から控除対象額を控除して検察官が定める額を当該対象被害者又はその一般承継人の数(同一の対象被害者の一般承継人が2人以上あるときは、これらを1人とみなす。)で除して得た額(同一の対象被害者の一般承継人が2人以上ある場合における当該一般承継人については、この額を当該一般承継人の数で除して得た額)
二 前号に掲げる者のほか、同一の対象被害者の一般承継人 当該対象被害者に係る支給対象犯罪行為により失われた財産の価額から控除対象額を控除して検察官が定める額を当該一般承継人の数で除して得た額
3 前項後段に規定する場合において、当該資格裁定を受ける者のうちに各人が支給を受けるべき被害回復給付金の額の割合について合意をした者があるときは、同項後段の規定にかかわらず、当該合意をした者に係る犯罪被害額は、同項後段の規定により算出された額のうちこれらの者に係るものを合算した額に当該合意において定められた各人が支給を受けるべき被害回復給付金の額の割合を乗じて得た額とする。
第11条 検察官は、被害回復給付金の支給の申請が支給申請期間(第9条第2項の規定による申請にあっては、一般承継があった日から60日)が経過した後にされたものであるとき、その他不適法であって補正することができないものであるときは、その申請を却下する旨の裁定をしなければならない。
2 検察官は、申請人が、第28条第1項の規定による報告、文書その他の物件の提出又は出頭を命ぜられた場合において、正当な理由がなくてこれに応じないときは、その申請を却下する旨の裁定をすることができる。
(裁定の方式等)
第12条 前2条の規定による裁定は、書面をもって行い、かつ、理由を付し、当該裁定をした検察官がこれに記名押印をしなければならない。
2 検察官は、裁定書の謄本を申請人に送達しなければならない。
3 前項の規定にかかわらず、送達を受けるべき者の所在が知れないとき、その他裁定書の謄本を送達することができないときは、検察官が裁定書の謄本を保管し、いつでもその送達を受けるべき者に交付すべき旨を当該検察官が所属する検察庁の掲示場に掲示することをもって同項の規定による送達に代えることができる。この場合においては、掲示を始めた日から2週間を経過した時に同項の規定による送達があったものとみなす。
(裁定表の作成等)
第13条 検察官は、第10条又は第11条の規定による裁定をしたときは、次に掲げる事項を記載した裁定表を作成し、申請人の閲覧に供するため、これを当該検察官が所属する検察庁に備え置かなければならない。
一 資格裁定を受けた者の氏名又は名称及び当該資格裁定において定められた犯罪被害額(資格裁定を受けた者がないときは、その旨)
二 その他法務省令で定める事項
第3款 支給の実施等
(支給の実施等)
第14条 検察官は、すべての申請に対する第10条又は第11条の規定による裁定、第26条第1項の規定による被害回復事務管理人の報酬の決定及び犯罪被害財産支給手続に要する費用の額が確定したとき(第6条第2項の規定により犯罪被害財産支給手続を開始した場合であって、当該確定の時点において、同条第1項に規定する犯罪被害財産又はその価額についてこれを給付資金として保管するに至っていないときは、当該給付資金を保管するに至ったとき)は、遅滞なく、資格裁定を受けた者に対し、被害回復給付金の支給をしなければならない。
2 前項の規定により支給する被害回復給付金の額は、資格裁定により定めた犯罪被害額の総額(以下この項及び第16条第2項において「総犯罪被害額」という。)が、給付資金の額から犯罪被害財産支給手続に要する費用等の額を控除した額を超えるときは、この額に当該資格裁定を受けた者に係る犯罪被害額の総犯罪被害額に対する割合を乗じて得た額(その額に1円未満の端数があるときは、これを切り捨てた額)とし、その他のときは、当該犯罪被害額とする。
3 検察官は、第1項の規定により支給する被害回復給付金の額を裁定表に記載し、法務省令で定めるところにより、その旨を公告しなければならない。
4 検察官は、第1項の規定にかかわらず、被害回復給付金の支給を受けることができる者の所在が知れないことその他の事由により当該被害回復給付金の支給をすることができないときは、第31条第1項に規定する期間が経過するまでの間、当該被害回復給付金に相当する金銭を保管するものとする。この場合において、当該保管に係る金銭は、第26条第1項及び第34条の規定の適用については、給付資金に含まれないものとする。
(裁定等確定前の支給)
第15条 検察官は、前条第1項に規定する裁定、報酬の決定又は費用の額の一部が確定していない場合であっても、資格裁定を受けた者(当該資格裁定が確定している者に限る。)に対し、被害回復給付金の支給を受けることができると見込まれる者の利益を害しないことが明らかであると認められる額の範囲内において相当と認める額の被害回復給付金の支給をすることができる。
2 検察官は、前項の規定により被害回復給付金を支給した場合において、前条第1項に規定する裁定、報酬の決定及び費用の額のすべてが確定したときは、遅滞なく、資格裁定を受けた者に対し、同条第2項の規定により算出される支給すべき被害回復給付金の額から前項の規定により支給された被害回復給付金の額を控除した額の被害回復給付金の支給をしなければならない。
3 前条第3項及び第4項の規定は、前項の規定により支給する被害回復給付金について準用する。この場合において、同条第3項中「額」とあるのは、「額(次条第1項の規定により支給された被害回復給付金の額を含む。)」と読み替えるものとする。
(追加支給)
第16条 検察官は、犯罪被害財産支給手続において、第14条第1項に規定する裁定、報酬の決定及び費用の額が確定し、かつ、資格裁定を受けたすべての者について被害回復給付金の支給等(同項、前条第1項若しくは第2項若しくはこの項の規定による被害回復給付金の支給又は第14条第4項前段(前条第3項及びこの条第3項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による被害回復給付金に相当する金銭の保管をいう。第18条及び第21条第1項第1号から第3号までにおいて同じ。)をした後に、当該犯罪被害財産支給手続に係る給付資金を新たに保管するに至った場合(当該犯罪被害財産支給手続の終了後にこれを保管するに至った場合を含む。)において、既に支給した被害回復給付金(第14条第4項前段の規定により被害回復給付金に相当する金銭が保管された場合においては、当該金銭を含む。次項において「既支給被害回復給付金」という。)の額が犯罪被害額に満たないときは、当該資格裁定を受けた者に対し、当該新たに保管するに至った給付資金から被害回復給付金の支給をしなければならない。ただし、その時点における給付資金をもってはその支給に要する費用等を支弁するのに不足すると認めるとき、その他その時点においては被害回復給付金の支給をすることが相当でないと認めるときは、この限りでない。
2 前項の規定により支給する被害回復給付金の額は、総犯罪被害残額(総犯罪被害額から既支給被害回復給付金の額の総額を控除した額をいう。以下この項において同じ。)が、前項に規定する給付資金の額から費用等の額(既支給被害回復給付金の算出において控除した費用等の額を除く。)を控除した額を超えるときは、この額に資格裁定を受けた者に係る犯罪被害残額(犯罪被害額から既支給被害回復給付金の額を控除した額をいう。以下この項において同じ。)の総犯罪被害残額に対する割合を乗じて得た額(その額に1円未満の端数があるときは、これを切り捨てた額)とし、その他のときは、犯罪被害残額とする。
3 第14条第3項及び第4項の規定は、第1項の規定により支給する被害回復給付金について準用する。
(資格裁定確定後の一般承継人に対する被害回復給付金の支給)
第17条 検察官は、資格裁定が確定した者について一般承継があった場合において、その者に支給すべき被害回復給付金でまだ支給していないものがあるときは、その者の一般承継人であって当該一般承継があった日から60日以内に届出をしたものに対し、未支給の被害回復給付金の支給をしなければならない。この場合において、当該一般承継人は、法務省令で定めるところにより、届出書を検察官に提出しなければならない。
2 前項の規定により届出をした一般承継人が2人以上ある場合における当該一般承継人に支給する被害回復給付金の額は、同項に規定する未支給の被害回復給付金の額を当該一般承継人の数で除して得た額(その額に1円未満の端数があるときは、これを切り捨てた額)とする。ただし、当該一般承継人のうちに各人が支給を受けるべき被害回復給付金の額の割合について合意をした者があるときは、当該合意をした者に支給する被害回復給付金の額は、この項本文の規定により算出された額のうちこれらの者に係るものを合算した額に当該合意において定められた各人が支給を受けるべき被害回復給付金の額の割合を乗じて得た額(その額に1円未満の端数があるときは、これを切り捨てた額)とする。
第4款 特別支給手続
(特別支給手続)
第18条 検察官は、前3款の規定による手続において、次の各号のいずれかに該当するときは、遅滞なく、当該手続における支給申請期間(第9条第2項の規定による申請にあっては、一般承継があった日から60日)内に被害回復給付金の支給の申請をしなかった者又は前条第1項に規定する一般承継人で同項の届出をしなかったものに対して残余給付資金(被害回復給付金の支給等に係る手続が終了した後の残余の給付資金をいう。以下同じ。)から被害回復給付金を支給するための手続(以下「特別支給手続」という。)を開始する旨の決定をするものとする。ただし、その時点において見込まれる残余給付資金をもっては特別支給手続に要する費用等を支弁するのに不足すると認めるとき、その他その時点においては特別支給手続を開始することが相当でないと認めるときは、この限りでない。
一 第9条第1項の規定による申請がないとき。
二 第14条第1項に規定する裁定、報酬の決定及び費用の額が確定した場合において、次のイ又はロのいずれかに該当するとき。
イ 第10条の規定による資格裁定を受けた者がないとき。
ロ 第10条の規定による資格裁定を受けたすべての者について被害回復給付金の支給等をしてもなお給付資金に残余が生ずることが明らかであると認めるとき。
(公告等)
第19条 検察官は、特別支給手続を開始する旨の決定をしたときは、直ちに、法務省令で定めるところにより、前3款の規定による手続において公告した第7条第1項第2号及び第3号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を官報に掲載して公告しなければならない。
一 特別支給手続を開始した旨
二 残余給付資金の額(当該決定の時においてその額が確定していないときは、残余給付資金として見込まれる額)
三 特別支給申請期間(特別支給手続に係る支給申請期間をいう。以下同じ。)
四 その他法務省令で定める事項
2 前項第3号に掲げる特別支給申請期間は、同項の規定による公告があった日の翌日から起算して30日以上でなければならない。
3 検察官は、対象被害者又はその一般承継人であって知れているものに対し、第1項の規定により公告すべき事項を通知しなければならない。ただし、被害回復給付金の支給を受けることができない者であることが明らかである者及び既に第7条第3項本文の規定により通知を受けた者については、この限りでない。
4 前3項に規定するもののほか、第1項の規定による公告及び前項の規定による通知に関し必要な事項は、法務省令で定める。
(準用)
第20条 前2款の規定は、特別支給手続について準用する。この場合において、第9条第1項及び第2項、第10条第1項並びに第11条第1項中「支給申請期間」とあるのは「特別支給申請期間」と、第10条第1項中「経過したとき(その時点において、第5条第1項の規定による支給対象犯罪行為の範囲を定める処分が確定していないときは、当該処分が確定したとき)」とあるのは「経過したとき」と、第14条第2項及び第4項中「給付資金」とあるのは「残余給付資金」と読み替えるものとする。
第5款 手続の終了
第21条 検察官は、次の各号のいずれかに該当するときは、犯罪被害財産支給手続を終了する旨の決定をするものとする。
一 次のイ又はロに掲げる規定により犯罪被害財産支給手続を開始した場合において、被害回復給付金の支給等をする前に、当該イ又はロに定める事由に該当するとき。
イ 第6条第1項 給付資金をもって犯罪被害財産支給手続に要する費用等を支弁するのに不足すると認める場合において、新たに給付資金を保管することとなる見込みがないとき。
ロ 第6条第2項 犯罪被害財産支給手続に要する費用等を支弁するのに足りる給付資金を保管することとなる見込みがないと認めるとき。
二 被害回復給付金の支給等をして給付資金に残余が生じなかった場合において、新たに給付資金を保管することとなる見込みがないとき。
三 被害回復給付金の支給等をして残余給付資金が生じた場合において、当該残余給付資金をもっては特別支給手続に要する費用等を支弁するのに不足すると認めるとき、その他特別支給手続を開始することが相当でないと認めるとき。
四 特別支給手続を開始した場合において、前条において準用する第9条第1項の規定による申請がないとき。
五 特別支給手続において、すべての申請に対する前条において準用する第10条又は第11条の規定による裁定、当該手続に係る第26条第1項の規定による被害回復事務管理人の報酬の決定及び当該手続に要する費用の額が確定した場合において、次のイからハまでのいずれかに該当するとき。
イ 前条において準用する第10条の規定による資格裁定を受けた者がないとき。
ロ 前条において準用する第10条の規定による資格裁定を受けたすべての者について、被害回復給付金の特別支給等(前条において準用する第14条第1項、第15条第1項若しくは第2項若しくは第16条第1項の規定による被害回復給付金の支給又は前条において準用する第14条第4項前段(第15条第3項及び第16条第3項において準用する場合を含む。)の規定による被害回復給付金に相当する金銭の保管をいう。以下この号において同じ。)をしたとき(当該被害回復給付金の特別支給等に係る額が犯罪被害額に達した場合に限る。)。
ハ ロに掲げる場合を除き、前条において準用する第10条の規定による資格裁定を受けたすべての者について被害回復給付金の特別支給等をした場合において、新たに給付資金を保管することとなる見込みがないとき。
六 前各号に掲げる場合を除き、給付資金をもって犯罪被害財産支給手続に要する費用等を支弁するのに不足すると認める場合において、新たに給付資金を保管することとなる見込みがないとき。
2 検察官は、前項の規定により犯罪被害財産支給手続を終了する旨の決定をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨を公告しなければならない。
第6款 被害回復事務管理人
(被害回復事務管理人の選任等)
第22条 検察官は、弁護士(弁護士法人を含む。)の中から、1人又は数人の被害回復事務管理人を選任し、次に掲げる事務の全部又は一部を行わせることができる。
一 第7条第3項又は第19条第3項の規定による通知に関する事務
二 第10条又は第11条(これらの規定を第20条において準用する場合を含む。)の規定による裁定のための審査に関する事務
三 第13条(第20条において準用する場合を含む。)の規定による裁定表の作成又は第14条第3項(第15条第3項及び第16条第3項(これらの規定を第20条において準用する場合を含む。)並びに第20条において準用する場合を含む。)若しくは第26条第3項の規定による裁定表への記載に関する事務
四 その他法務省令で定める事務(第40条第1項各号に掲げる処分、決定及び裁定を除く。)
2 検察官は、被害回復事務管理人を選任したときは、法務省令で定めるところにより、その氏名又は名称、被害回復事務(前項の規定により被害回復事務管理人に行わせることとした事務をいう。以下同じ。)の範囲その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。
(被害回復事務管理人の義務等)
第23条 被害回復事務管理人は、公平かつ誠実に被害回復事務を行わなければならない。
2 検察官は、被害回復事務の適正かつ確実な実施を確保するため必要があると認めるときは、被害回復事務管理人に対し、その事務に関し報告をさせることができる。
3 検察官は、被害回復事務の処理が法令の規定に違反していると認めるとき、又は適正を欠いていると認めるときは、被害回復事務管理人に対し、その事務の処理について違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを指示することができる。
4 検察官は、被害回復事務管理人が前項の措置を講じないとき、その他重要な事由があるときは、被害回復事務管理人を解任することができる。
5 第3項の規定による指示については、行政手続法(平成5年法律第88号)第36条の3の規定は、適用しない。
(訴訟記録の使用等)
第24条 検察官は、被害回復事務を行うため必要があると認めるときは、被害回復事務管理人に対し、支給対象犯罪行為に係る被告事件の終結後の訴訟記録を使用させるものとする。
2 検察官は、被害回復事務を行うため必要があると認める場合であって、相当と認めるときは、被害回復事務管理人に対し、支給対象犯罪行為に係る訴訟に関する記録(前項の訴訟記録を除く。)を使用させることができる。
(事務の結果の報告)
第25条 第22条第1項第2号に掲げる事務を行う被害回復事務管理人は、当該事務を終えたときは、遅滞なく、検察官に対し、書面により、その結果を報告しなければならない。
(被害回復事務管理人の報酬等)
第26条 被害回復事務管理人は、給付資金から、費用の前払及び検察官が定める報酬を受けることができる。
2 第12条第1項及び第2項の規定は、前項の規定による報酬の決定について準用する。この場合において、同条第2項中「裁定書」とあるのは「報酬決定書」と、「申請人」とあるのは「被害回復事務管理人」と読み替えるものとする。
3 検察官は、第1項の規定による報酬の決定をしたときは、その報酬の額を裁定表に記載しなければならない。
(被害回復事務管理人の秘密保持義務等)
第27条 被害回復事務管理人(弁護士法人である場合には、その社員又は使用人である弁護士であって被害回復事務を行うもの。以下この条において同じ。)又は被害回復事務管理人であった者は、被害回復事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
2 被害回復事務管理人は、刑法(明治40年法律第45号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第7款 雑則
(調査)
第28条 検察官は、犯罪被害財産支給手続における事務を行うため必要があると認めるときは、申請人その他の関係人に対して、報告、文書その他の物件の提出若しくは出頭を命じ、又は公務所若しくは公私の団体に照会して、必要な事項の報告を求めることができる。
2 被害回復事務管理人は、被害回復事務を行うため必要があると認めるときは、申請人その他の関係人に対して、報告、文書その他の物件の提出若しくは出頭を求め、又は公務所若しくは公私の団体に照会して、必要な事項の報告を求めることができる。
(損害賠償請求権等との関係)
第29条 被害回復給付金を支給したときは、その支給を受けた者が有する支給対象犯罪行為に係る損害賠償請求権その他の請求権は、その支給を受けた額の限度において消滅する。
(不正利得の徴収等)
第30条 犯罪被害財産支給手続において、偽りその他不正の手段により被害回復給付金の支給を受けた者があるときは、検察官は、国税滞納処分の例により、その者から、その支給を受けた被害回復給付金の額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。
2 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
3 第1項の規定により徴収した金銭は、当該犯罪被害財産支給手続において、第3款及び第4款の規定により被害回復給付金を支給するについては、その徴収の時に新たに保管するに至った給付資金とみなす。
(権利の消滅等)
第31条 犯罪被害財産支給手続において、被害回復給付金の支給を受ける権利は、第14条第3項(第15条第3項及び第16条第3項(これらの規定を第20条において準用する場合を含む。)並びに第20条において準用する場合を含む。)の規定による公告があった時から6月間行使しないときは、消滅する。
2 前項の規定により消滅した権利に係る保管金(第14条第4項前段(第15条第3項及び第16条第3項(これらの規定を第20条において準用する場合を含む。)並びに第20条において準用する場合を含む。)の規定により保管している金銭をいう。)は、当該犯罪被害財産支給手続において、第3款及び第4款の規定により被害回復給付金を支給するについては、その消滅の時に新たに保管するに至った給付資金とみなす。
(被害回復給付金の支給を受ける権利の保護)
第32条 被害回復給付金の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。ただし、国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は、この限りでない。
(戸籍事項の無料証明)
第33条 市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市にあっては、区長又は総合区長とする。)は、検察官若しくは被害回復事務管理人又は被害回復給付金の支給を受けようとする者に対して、当該市(特別区を含む。)町村の条例で定めるところにより、対象被害者若しくはその一般承継人又は資格裁定が確定した者の一般承継人の戸籍に関し、無料で証明を行うことができる。
(一般会計への繰入れ)
第34条 検察官は、第8条第1項又は第21条第1項の決定が確定した場合において、その確定の時に給付資金を保管しているときは、これを一般会計の歳入に繰り入れるものとする。
2 犯罪被害財産支給手続が終了した後に第16条第1項(第20条において準用する場合を含む。)の規定により被害回復給付金を支給した場合において、その支給が終了した時に給付資金を保管しているときも、前項と同様とする。
第3節 外国譲与財産支給手続
(支給対象犯罪行為の範囲を定める処分等)
第35条 検察官は、外国譲与財産により被害回復給付金を支給しようとするときは、支給対象犯罪行為の範囲を定めなければならない。
2 前項に規定する支給対象犯罪行為の範囲は、同項の外国譲与財産に係る第2条第5号の対象犯罪行為及びこれと一連の犯行として行われた対象犯罪行為について、その罪の種類、時期及び態様、これを実行した者、外国犯罪被害財産等の形成の経緯その他の事情を考慮して定めるものとする。
3 検察官は、前2項の規定により支給対象犯罪行為の範囲を2以上に区分して定めたときは、その範囲ごとに、第1項の外国譲与財産(1の外国譲与財産が異なる支給対象犯罪行為の範囲に属する対象犯罪行為によりその被害を受けた者から得た財産又は当該財産の保有若しくは処分に基づき得た財産から形成されたものであって額又は数量により区分することができないものである場合においては、当該外国譲与財産の換価又は取立てにより得られる金銭の価額)を区分するものとする。
(外国譲与財産の処分)
第36条 検察官は、外国譲与財産が金銭以外の財産であるときは、その換価又は取立てをしなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、外国譲与財産の価額が著しく低い場合において、当該外国譲与財産の売却につき買受人がないとき、又は売却しても買受人がないことが明らかであるときは、これを廃棄することができる。
(外国譲与財産支給手続の開始)
第37条 検察官は、第35条第1項の規定により支給対象犯罪行為の範囲を定めた場合において、同項の外国譲与財産について、これを給付資金として保管するに至ったときは、遅滞なく、当該給付資金から被害回復給付金を支給するための手続(以下「外国譲与財産支給手続」という。)を開始する旨の決定をするものとする。ただし、その時点における給付資金をもっては外国譲与財産支給手続に要する費用等を支弁するのに不足すると認めるとき、その他その時点においては外国譲与財産支給手続を開始することが相当でないと認めるときは、この限りでない。
2 検察官は、外国から外国犯罪被害財産等又はその換価若しくは取立てにより得られた金銭の譲与を受けるため特に必要があると認めるときは、前項本文の規定にかかわらず、これを給付資金として保管する前に、外国譲与財産支給手続を開始する旨の決定をすることができる。
3 前2項の決定は、第35条第3項に規定する場合にあっては、支給対象犯罪行為の範囲ごとにするものとする。
4 検察官は、2以上の外国譲与財産について第35条第1項の規定により定められた支給対象犯罪行為の範囲が同一であるときは、これらの外国譲与財産(既に外国譲与財産支給手続が開始されているものを除く。)を同一の外国譲与財産とみなして、第1項又は第2項の決定をすることができる。
5 検察官は、外国譲与財産について第35条第1項の規定により定められた支給対象犯罪行為の範囲と犯罪被害財産の没収又はその価額の追徴の裁判について第5条第1項の規定により定められた支給対象犯罪行為の範囲とが同一であるときは、これらの外国譲与財産(既に外国譲与財産支給手続が開始されているものを除く。)及び犯罪被害財産又はその価額(既に犯罪被害財産支給手続が開始されているものを除く。)を同一の外国譲与財産とみなして、第1項又は第2項の決定をすることができる。
(外国譲与財産支給手続の不開始)
第38条 検察官は、外国譲与財産支給手続に要する費用等を支弁するのに足りる給付資金を保管することとなる見込みがないと認めるときは、外国譲与財産支給手続を開始しない旨の決定をするものとする。
2 検察官は、前項の決定をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨を公告しなければならない。
(準用)
第39条 前節(第5条、第6条及び第8条を除く。)の規定は、外国譲与財産支給手続について準用する。この場合において、第7条第1項中「前条第2項」とあるのは「第37条第2項」と、第10条第1項及び第20条中「第5条第1項」とあるのは「第35条第1項」と、第14条第1項及び第21条第1項第1号ロ中「第6条第2項」とあるのは「第37条第2項」と、第14条第1項中「犯罪被害財産又はその価額」とあるのは「外国譲与財産」と、第21条第1項第1号イ中「第6条第1項」とあるのは「第37条第1項」と、第24条第2項中「除く。)」とあるのは「除く。)及び外国譲与財産に係る外国の法令による裁判又は命令その他の処分に関する記録」と、第34条第1項中「第8条第1項」とあるのは「第38条第1項」と読み替えるものとする。
第3章 不服申立て等
(検察庁の長に対する審査の申立て)
第40条 次の各号に掲げる処分、決定、裁定その他の行為(以下「処分等」という。)に不服がある者は、それぞれ当該各号に定める日から起算して30日以内に、当該処分等をした検察官が所属する検察庁の長に対し、審査の申立てをすることができる。
一 第5条第1項又は第35条第1項の規定による支給対象犯罪行為の範囲を定める処分 当該処分の公告があった日の翌日
二 第8条第1項、第21条第1項(前条において準用する場合を含む。)又は第38条第1項の決定 当該決定の公告があった日の翌日
三 第10条又は第11条(これらの規定を第20条(前条において準用する場合を含む。)及び前条において準用する場合を含む。)の規定による裁定 裁定書の謄本の送達があった日の翌日
四 第26条第1項(前条において準用する場合を含む。)の規定による被害回復事務管理人の報酬の決定 報酬決定書の謄本の送達があった日の翌日
五 前各号に掲げるもののほか、この法律に基づく手続に係る検察官の行為で法務省令で定めるもの 法務省令で定める日
2 前項の規定にかかわらず、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であっても、審査の申立てをすることができる。
第40条の2 この法律又はこの法律に基づく法務省令の規定により検察官に対して処分等についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、検察官の不作為(この法律又はこの法律に基づく法務省令の規定による申請に対して何らの処分等をもしないことをいう。以下同じ。)がある場合には、当該不作為に係る検察官が所属する検察庁の長に対し、当該不作為についての審査の申立てをすることができる。
(審査申立書の提出)
第40条の3 前2条の規定による審査の申立ては、法務省令で定めるところにより、審査申立書を提出してしなければならない。
2 第40条第1項各号に掲げる処分等についての審査申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 審査の申立てに係る処分等の内容
二 審査の申立ての趣旨及び理由
三 その他法務省令で定める事項
3 前条に規定する不作為についての審査申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 当該不作為に係る処分等についての申請の内容及び年月日
二 その他法務省令で定める事項
(審理の方式)
第40条の4 審査の申立ての審理は、書面による。
(他の申請人への通知等)
第41条 検察庁の長は、第40条第1項第3号に掲げる裁定についての審査の申立てが他の申請人に対する裁定についてされたものであるときは、当該他の申請人に対し、その旨を通知し、かつ、意見を記載した書面を提出する機会を与えなければならない。
(裁決)
第42条 検察庁の長は、第40条第1項の規定による審査の申立てについては、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める裁決をしなければならない。
一 当該審査の申立てが第40条第1項に規定する期間が経過した後にされたものである場合その他不適法である場合 当該審査の申立てを却下する裁決
二 当該審査の申立てが理由がない場合 当該審査の申立てを棄却する裁決
三 当該審査の申立てに係る処分等が事実上の行為以外のものである場合において、その申立てが理由があるとき 当該審査の申立てに係る第40条第1項各号に掲げる処分等を取り消し、又は変更する裁決
四 前号の規定により、検察庁の長以外の検察官がしたこの法律又はこの法律に基づく法務省令の規定による申請を却下し、又は棄却する処分等を取り消す場合において、当該申請に対して一定の処分等をすべきものと認めるとき 当該処分等に係る検察官に対し、当該処分等をすべき旨を命ずる裁決
五 第3号の規定により、検察庁の長がしたこの法律又はこの法律に基づく法務省令の規定による申請を却下し、又は棄却する処分等を取り消す場合において、当該申請に対して一定の処分等をすべきものと認めるとき 当該処分等をする裁決
六 当該審査の申立てに係る処分等が検察庁の長以外の検察官のした事実上の行為である場合において、その申立てが理由があるとき 当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、当該事実上の行為に係る検察官に対し、当該事実上の行為を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずる裁決
七 当該審査の申立てに係る処分等が検察庁の長のした事実上の行為である場合において、その申立てが理由があるとき 当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、当該事実上の行為を撤廃し、又はこれを変更する裁決
2 前項第3号、第6号又は第7号の場合において、検察庁の長は、審査申立人の不利益に当該処分等を変更し、又は当該事実上の行為を変更すべきことを命じ、若しくはこれを変更することはできない。
第42条の2 検察庁の長は、第40条の2の規定による審査の申立てについては、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める裁決をしなければならない。
一 当該審査の申立てが不作為に係る処分等についての申請から相当の期間が経過しないでされたものである場合その他不適法である場合 当該審査の申立てを却下する裁決
二 当該審査の申立てが理由がない場合 当該審査の申立てを棄却する裁決
三 当該審査の申立てに係る不作為が検察庁の長以外の検察官によるものである場合において、その申立てが理由があるとき 当該不作為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、当該申請に対して一定の処分等をすべきものと認めるときは、当該不作為に係る検察官に対し、当該処分等をすべき旨を命ずる裁決
四 当該審査の申立てに係る不作為が検察庁の長によるものである場合において、その申立てが理由があるとき 当該不作為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、当該申請に対して一定の処分等をすべきものと認めるときは、当該処分等をする裁決
(裁定の方式等に関する規定の準用)
第43条 第12条の規定は、第42条第1項各号及び前条各号に定める裁決について準用する。この場合において、第12条中「検察官」とあるのは「検察庁の長」と、同条第2項及び第3項中「裁定書」とあるのは「裁決書」と、同条第2項中「申請人」とあるのは「審査申立人(当該審査の申立てが他の申請人に対する裁定についてされたものであるときは、審査申立人及び当該他の申請人)」と読み替えるものとする。
(行政不服審査法の準用)
第44条 行政不服審査法(平成26年法律第68号)第10条から第15条まで、第18条第3項、第21条、第22条第1項及び第5項、第23条、第25条第1項、第2項及び第4項から第7項まで、第26条から第28条まで、第30条第2項及び第3項、第32条から第36条まで、第38条第1項から第5項まで、第39条、第51条第4項、第52条第1項から第3項まで並びに第53条の規定は、第40条第1項及び第40条の2の規定による審査の申立てについて準用する。この場合において、次の表の上欄に掲げる同法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。
読み替えられる行政不服審査法の規定 | 読み替えられる字句 | 読み替える字句 |
第11条第2項 | 第9条第1項の規定により指名された者(以下「審理員」という。) | 犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律第40条第1項又は第40条の2の規定による審査の申立てがされた検察庁の長(以下「審査庁」という。) |
第13条第1項及び第2項、第28条、第30条第2項及び第3項、第32条第3項、第33条から第36条まで、第38条第1項から第3項まで及び第5項並びに第39条 | 審理員 | 審査庁 |
第14条 | 第19条に規定する審査請求書又は第21条第2項に規定する審査請求録取書 | 審査申立書 |
第15条第6項 | 権利 | 権利(被害回復給付金の支給を受ける権利を除く。) |
第18条第3項 | 次条に規定する審査請求書 | 審査申立書 |
前2項に規定する期間(以下「審査請求期間」という。) | 犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律第40条第1項に規定する期間 | |
第21条第1項 | 審査請求書を提出し、又は処分庁等に対し第19条第2項から第5項までに規定する事項を陳述する | 審査申立書を提出する |
第21条第2項 | 審査請求書又は審査請求録取書(前条後段の規定により陳述の内容を録取した書面をいう。第29条第1項及び第55条において同じ。) | 審査申立書 |
第21条第3項 | 審査請求書を提出し、又は処分庁に対し当該事項を陳述した | 審査申立書を提出した |
第22条第1項 | 審査請求書を処分庁又は審査庁 | 審査申立書を審査庁 |
第22条第5項 | 審査請求書又は再調査の請求書若しくは再調査の請求録取書 | 審査申立書 |
第23条(見出しを含む。) | 審査請求書 | 審査申立書 |
第23条 | 第19条 | 犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律第40条の3 |
第25条第2項 | 処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁 | 審査庁 |
第25条第7項 | あったとき、又は審理員から第40条に規定する執行停止をすべき旨の意見書が提出された | あった |
第30条第2項 | 第40条及び第42条第1項を除き、以下 | 以下 |
第30条第3項 | 審査請求人から反論書の提出があったときはこれを参加人及び処分庁等に、参加人 | 参加人 |
これを審査請求人及び処分庁等に、それぞれ | 、これを審査請求人に | |
第38条第1項 | 参加人は、第41条第1項又は第2項の規定により審理手続が終結するまでの間 | 参加人は |
第29条第4項各号に掲げる書面又は第32条第1項若しくは第2項若しくは | 第32条第1項若しくは第2項又は | |
当該書面若しくは当該書類 | 当該書類 | |
第51条第4項 | 参加人及び処分庁等(審査庁以外の処分庁等に限る。) | 参加人 |
第52条第3項 | 法令の規定により公示された処分 | 犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律第40条第1項第1号に掲げる処分又は同項第2号に掲げる決定 |
当該処分が取り消され、又は変更された旨を公示しなければ | 法務省令で定めるところにより、当該処分又は決定が取り消され、又は変更された旨を公告しなければ |
(審査請求の制限)
第45条 第40条第1項各号に掲げる処分等及び第40条の2に規定する不作為については、審査請求をすることができない。
(訴訟との関係)
第46条 第40条第1項各号に掲げる処分等の取消しの訴えは、当該処分等についての審査の申立てに対する裁決を経た後でなければ、提起することができない。
(訴訟の特例)
第47条 第40条第1項各号に掲げる処分等の取消しの訴え及び当該処分等に係る第42条第1項各号に定める裁決の取消しの訴えは、当該処分等をした検察官が所属する検察庁の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
2 第40条の2に規定する不作為に係る第42条の2各号に定める裁決の取消しの訴えは、当該不作為に係る検察官が所属する検察庁の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
3 前2項に規定する処分等又は裁決の取消しの訴えは、第43条において準用する第12条第2項の規定による裁決書の謄本の送達を受けた日から30日を経過したときは、提起することができない。
4 前項の期間は、不変期間とする。
5 国は、第1項に規定する訴えが、他の申請人に対する第40条第1項第3号に掲げる裁定又は当該裁定に係る第42条第1項各号に定める裁決の取消しを求めるものであるときは、遅滞なく、当該他の申請人に対し、訴訟告知をしなければならない。
(取消裁決等があった場合の申請等の効力)
第48条 第5条第1項若しくは第35条第1項の規定による支給対象犯罪行為の範囲を定める処分(以下この条において「旧処分」という。)を取り消す裁決若しくは旧処分を取り消す判決が確定した場合において改めて支給対象犯罪行為の範囲を定める処分(以下この条において「新処分」という。)がされたとき、又は旧処分を変更する裁決(以下この条において「変更裁決」という。)が確定したときは、旧処分に基づいて申請人が行った申請その他の行為(以下この条において「申請等」という。)又は申請人に対して行われた調査その他の行為(以下この条において「調査等」という。)は、新処分又は変更裁決に基づいて申請人が行った申請等又は申請人に対して行われた調査等とみなす。
第4章 雑則
(法務省令への委任)
第49条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、法務省令で定める。
第5章 罰則
第50条 第27条第1項(第39条において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第51条 次の各号のいずれかに該当する者は、50万円以下の罰金に処する。
一 第9条第1項又は第2項(これらの規定を第20条(第39条において準用する場合を含む。)及び第39条において準用する場合を含む。)に規定する申請書又は資料に虚偽の記載をして提出した者
二 第17条第1項(第20条(第39条において準用する場合を含む。)及び第39条において準用する場合を含む。次号において同じ。)に規定する届出書に虚偽の記載をして提出した者
三 第28条第1項(第39条において準用する場合を含む。)の規定により報告若しくは文書の提出を命ぜられて、又は第28条第2項(第39条において準用する場合を含む。)の規定により報告若しくは文書の提出を求められて、虚偽の報告をし、又は虚偽の記載をした文書を提出した者(申請人又は第17条第1項の規定により届出をした者に限る。)
2 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めがあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても同項の刑を科する。
3 法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
附則
(施行期日)
第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第3条第1項から第3項までの規定は、公布の日から起算して30日を経過した日から施行する。
第2条 削除
(経過措置)
第3条 検察官は、外国から外国犯罪被害財産等又はその換価若しくは取立てにより得られた金銭の譲与を受けるため特に必要があると認めるときは、この法律の施行の日前においても、第35条の規定並びに第39条において準用する第22条第1項、第23条第2項から第4項まで、第24条及び第28条の規定の例により、支給対象犯罪行為の範囲を定めること、被害回復事務管理人を選任し、被害回復事務を行わせることその他の外国譲与財産支給手続を開始するために必要な行為をすることができる。
2 第39条において準用する第23条第1項及び第27条の規定は前項の規定により選任された被害回復事務管理人について、第39条において準用する第27条第1項の規定は前項の規定により選任された被害回復事務管理人であった者について、それぞれ準用する。
3 前項において準用する第39条において準用する第27条第1項の規定に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
4 この法律の施行の際現に第1項の規定により選任された被害回復事務管理人である者は、この法律の施行の日に、第39条において準用する第22条第1項の規定により被害回復事務管理人に選任されたものとみなす。
5 第1項の規定により行われた外国譲与財産支給手続を開始するために必要な行為は、この法律の施行の日以後は、この法律の規定により当該外国譲与財産支給手続において行われた行為とみなす。
附則 (平成23年6月24日法律第74号) 抄
(施行期日)
第1条 この法律は、公布の日から起算して20日を経過した日から施行する。
附則 (平成26年5月30日法律第42号) 抄
(施行期日)
第1条 この法律は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
附則 (平成26年6月13日法律第69号) 抄
(施行期日)
第1条 この法律は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)の施行の日から施行する。
(経過措置の原則)
第5条 行政庁の処分その他の行為又は不作為についての不服申立てであってこの法律の施行前にされた行政庁の処分その他の行為又はこの法律の施行前にされた申請に係る行政庁の不作為に係るものについては、この附則に特別の定めがある場合を除き、なお従前の例による。
(訴訟に関する経過措置)
第6条 この法律による改正前の法律の規定により不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為を経た後でなければ訴えを提起できないこととされる事項であって、当該不服申立てを提起しないでこの法律の施行前にこれを提起すべき期間を経過したもの(当該不服申立てが他の不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為を経た後でなければ提起できないとされる場合にあっては、当該他の不服申立てを提起しないでこの法律の施行前にこれを提起すべき期間を経過したものを含む。)の訴えの提起については、なお従前の例による。
2 この法律の規定による改正前の法律の規定(前条の規定によりなお従前の例によることとされる場合を含む。)により異議申立てが提起された処分その他の行為であって、この法律の規定による改正後の法律の規定により審査請求に対する裁決を経た後でなければ取消しの訴えを提起することができないこととされるものの取消しの訴えの提起については、なお従前の例による。
3 不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為の取消しの訴えであって、この法律の施行前に提起されたものについては、なお従前の例による。
(罰則に関する経過措置)
第9条 この法律の施行前にした行為並びに附則第5条及び前2条の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(その他の経過措置の政令への委任)
第10条 附則第5条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。
附則 (平成26年6月13日法律第70号) 抄
(施行期日)
第1条 この法律は、平成27年4月1日から施行する。
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