ゆうげんせきにんじぎょうくみあいけいやくにかんするほうりつ
有限責任事業組合契約に関する法律
平成17年法律第40号
第1章 総則
(目的)
第1条 この法律は、共同で営利を目的とする事業を営むための組合契約であって、組合員の責任の限度を出資の価額とするものに関する制度を確立することにより、個人又は法人が共同して行う事業の健全な発展を図り、もって我が国の経済活力の向上に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において「有限責任事業組合」とは、次条第1項の有限責任事業組合契約によって成立する組合をいう。
(有限責任事業組合契約)
第3条 有限責任事業組合契約(以下「組合契約」という。)は、個人又は法人が出資して、それぞれの出資の価額を責任の限度として共同で営利を目的とする事業を営むことを約し、各当事者がそれぞれの出資に係る払込み又は給付の全部を履行することによって、その効力を生ずる。
2 組合契約の当事者のうち1人以上は、国内に住所を有し、若しくは現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人(第37条において「居住者」という。)又は国内に本店若しくは主たる事務所を有する法人(同条において「内国法人」という。)でなければならない。
3 組合契約は、不当に債務を免れる目的でこれを濫用してはならない。
(組合契約書の作成)
第4条 組合契約を締結しようとする者は、組合契約の契約書(以下「組合契約書」という。)を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
2 組合契約書は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるもので経済産業省令で定めるものをいう。以下この項及び第31条において同じ。)をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、経済産業省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
3 組合契約書には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 有限責任事業組合(以下「組合」という。)の事業
二 組合の名称
三 組合の事務所の所在地
四 組合員の氏名又は名称及び住所
五 組合契約の効力が発生する年月日
六 組合の存続期間
七 組合員の出資の目的及びその価額
八 組合の事業年度
4 前項第8号の組合の事業年度の期間は、1年を超えることができない。
5 第3項各号に掲げる事項のほか、組合契約書には、この法律の規定に違反しない事項を記載し、又は記録することができる。
(組合契約の変更)
第5条 組合契約書に記載し、又は記録すべき事項(前条第3項第5号に掲げる事項を除く。)についての組合契約の変更(第25条又は第26条の規定による脱退によって同項第4号に掲げる事項を変更する場合を除く。)は、総組合員の同意によらなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、前条第3項第3号若しくは第8号に掲げる事項又は同条第5項の規定により組合契約書に記載し、若しくは記録する事項(組合契約書において第33条に規定する組合員の損益分配の割合について定めをする場合にあっては、当該割合に関する事項を除く。)に係る組合契約の変更については、組合契約書において総組合員の同意を要しない旨の定めをすることを妨げない。
3 組合契約書に記載し、又は記録した事項に変更を生じたときは、遅滞なく、当該組合契約書の記載又は記録を変更しなければならない。
(組合に対してする通知又は催告)
第6条 組合に対してする通知又は催告は、組合の事務所の所在場所又は組合員(組合員が法人である場合にあっては、第19条第1項の規定により選任された当該組合員の職務を行うべき者)の住所にあててすれば足りる。
(組合の業務の制限)
第7条 組合員は、次に掲げる業務を組合の業務として行うことができない。
一 その性質上組合員の責任の限度を出資の価額とすることが適当でない業務として政令で定めるもの
二 組合の債権者に不当な損害を与えるおそれがある業務として政令で定めるもの
2 組合員は、前項の規定に違反して行われた業務を追認することができない。
(登記)
第8条 この法律の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。
2 故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。
(名称)
第9条 組合には、その名称中に有限責任事業組合という文字を用いなければならない。
2 何人も、組合でないものについて、その名称中に有限責任事業組合という文字を用いてはならない。
3 組合の名称については、会社法(平成17年法律第86号)第8条の規定を準用する。
(商行為)
第10条 組合員が組合の業務として行う行為は、商行為とする。
第2章 組合員の権利及び義務
(組合員の出資)
第11条 組合員は、金銭その他の財産のみをもって出資の目的とすることができる。
(業務執行の決定)
第12条 組合の業務執行を決定するには、総組合員の同意によらなければならない。ただし、次に掲げる事項以外の事項の決定については、組合契約書において総組合員の同意を要しない旨の定めをすることを妨げない。
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
2 前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事項のうち経済産業省令で定めるものについては、組合契約書において総組合員の同意を要しない旨の定めをすることを妨げない。ただし、その決定に要する組合員の同意を総組合員の3分の2未満とすることはできない。
(業務の執行)
第13条 組合員は、前条の規定による決定に基づき、組合の業務を執行する権利を有し、義務を負う。
2 組合員は、組合の業務執行の一部のみを委任することができる。
3 組合員の組合の業務を執行する権利に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
(常務)
第14条 前2条の規定にかかわらず、組合の常務は、各組合員が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の組合員が異議を述べたときは、この限りでない。
(組合員の責任)
第15条 組合員は、その出資の価額を限度として、組合の債務を弁済する責任を負う。
(組合員の出資に係る責任)
第16条 組合員が債権を出資の目的とした場合において、当該債権の債務者が弁済期に弁済をしなかったときは、当該組合員は、その弁済をする責任を負う。この場合においては、当該組合員は、その利息を支払うほか、損害の賠償をしなければならない。
(組合の業務に関する損害賠償責任)
第17条 組合の業務に関して第三者に損害が生じたときは、組合員は、組合財産をもって当該損害を賠償する責任を負う。
(組合員等の第三者に対する損害賠償責任)
第18条 組合員又は次条第1項の規定により選任された組合員の職務を行うべき者(以下この条において「組合員等」という。)が自己の職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該組合員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2 前項の場合において、他の組合員等も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。
(法人が組合員である場合の特則)
第19条 法人が組合員である場合には、当該法人は、当該組合員の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名及び住所を他の組合員に通知しなければならない。
2 民法(明治29年法律第89号)第671条の規定は、前項の規定により選任された組合員の職務を行うべき者について準用する。
(組合財産の分別管理義務)
第20条 組合員は、組合財産を自己の固有財産及び他の組合の組合財産と分別して管理しなければならない。
(強制執行等をすることができる者の範囲)
第21条 債務名義、仮差押命令又は仮処分命令に表示された当事者が組合である場合においては、次に掲げる者に対し、又はその者のために強制執行又は仮差押え若しくは仮処分の執行をすることができる。
一 当該組合の組合員
二 前号に掲げる者の債務名義成立後の承継人(民事執行法(昭和54年法律第4号)第22条第1号、第2号又は第6号に掲げる債務名義にあっては口頭弁論終結後の承継人、同条第3号の2に掲げる債務名義又は同条第7号に掲げる債務名義のうち損害賠償命令に係るものにあっては審理終結後の承継人)
2 前項に規定する債務名義による強制執行は、同項各号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者に対しても、することができる。
(組合財産に対する強制執行等の禁止)
第22条 組合財産となる前の原因により生じた権利及び組合の業務に関して生じた権利に基づく場合を除き、組合財産に対して強制執行、仮差押え若しくは仮処分をし、又は組合財産を競売することはできない。
2 前項の規定に違反してなされた強制執行、仮差押え、仮処分又は競売に対しては、組合員は異議を主張することができる。
3 前項の規定による異議については、民事執行法第38条及び民事保全法(平成元年法律第91号)第45条の規定を準用する。この場合において、民事執行法第38条第1項中「強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者」とあるのは「有限責任事業組合の組合員」と、同条第2項中「第三者」とあるのは「有限責任事業組合の組合員」と読み替えるものとする。
(組合員の職務を代行する者)
第23条 仮処分命令により選任された組合員の職務を代行する者は、仮処分命令に別段の定めがある場合を除き、組合の常務に属しない行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
2 前項の規定に違反して行った組合員の職務を代行する者の行為は、無効とする。ただし、組合員は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
3 第1項の裁判所の許可については、会社法第868条第1項、第869条、第871条、第874条(第4号に係る部分に限る。)、第875条及び第876条の規定を準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める。
第3章 組合員の加入及び脱退
(組合員の加入)
第24条 組合員は、新たに組合員を加入させることができる。
2 新たに組合員になろうとする者が、当該加入に係る組合契約の変更をした時にその出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、その者は、当該出資に係る払込み又は給付を完了した時に、組合員となる。
(任意脱退)
第25条 各組合員は、やむを得ない場合を除いて、組合を脱退することができない。ただし、組合契約書において別段の定めをすることを妨げない。
(法定脱退)
第26条 前条に規定する場合のほか、組合員は、次に掲げる事由によって脱退する。
一 死亡
二 破産手続開始の決定を受けたこと。
三 後見開始の審判を受けたこと。
四 除名
(除名)
第27条 組合員の除名は、組合員がその職務を怠ったときその他正当な事由があるときに限り、他の組合員の一致によってすることができる。ただし、組合契約書において他の組合員の一致を要しない旨の定めをすることを妨げない。
2 前項の場合において、組合員の除名は、除名した組合員にその旨を通知しなければ、これをもってその組合員に対抗することができない。
第4章 計算等
(会計の原則)
第28条 組合の会計は、この法律及びこの法律に基づく経済産業省令の規定によるほか、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。
(会計帳簿の作成及び保存)
第29条 組合員は、経済産業省令で定めるところにより、組合の会計帳簿を作成しなければならない。
2 前項の組合の会計帳簿には、各組合員が履行した出資の価額その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
3 組合の会計帳簿を作成した組合員は、経済産業省令で定めるところにより、各組合員に対し、当該会計帳簿の写しを交付しなければならない。
4 組合員は、組合の会計帳簿の閉鎖の時から10年間、経済産業省令で定めるところにより、当該会計帳簿及び組合の事業に関する重要な資料を保存しなければならない。
(会計帳簿の提出命令)
第30条 裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、組合の会計帳簿の全部又は一部の提出を命ずることができる。
(財務諸表の備置き及び閲覧等)
第31条 組合員は、経済産業省令で定めるところにより、組合の成立後速やかに、組合の成立の日における組合の貸借対照表を作成しなければならない。
2 組合員は、毎事業年度経過後2月以内に、経済産業省令で定めるところにより、その事業年度の組合の貸借対照表及び損益計算書並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
3 前2項の規定により作成すべき貸借対照表及び損益計算書並びにこれらの附属明細書(以下「財務諸表」という。)は、電磁的記録をもって作成することができる。
4 組合員は、財務諸表を、その作成の時から10年間、主たる事務所に備え置かなければならない。
5 前項の場合においては、組合員は、組合契約書を併せて備え置かなければならない。
6 組合の債権者は、当該組合の営業時間内は、いつでも、財務諸表(作成した日から5年以内のものに限る。)及び組合契約書について、次に掲げる請求をすることができる。
一 財務諸表及び組合契約書が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 財務諸表及び組合契約書が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を経済産業省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
(財務諸表の提出命令)
第32条 裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、財務諸表の全部又は一部の提出を命ずることができる。
(組合員の損益分配の割合)
第33条 組合員の損益分配の割合は、総組合員の同意により、経済産業省令で定めるところにより別段の定めをした場合を除き、会計帳簿に記載された各組合員が履行した出資の価額に応じて定める。
(財産分配の制限)
第34条 組合財産は、その分配の日における分配可能額(組合員に分配することができる額として純資産額の範囲内で経済産業省令で定める方法により算定される額をいう。次条において同じ。)を超えて、これを分配することができない。
2 分配の日における組合の剰余金に相当する額として経済産業省令で定める方法により算定される額を超えて組合財産を分配するには、総組合員の同意によらなければならない。
3 前項の場合において、組合員は、分配する組合財産の帳簿価額から同項の額を控除して得た額を、経済産業省令で定めるところにより組合契約書に記載しなければならない。
(財産分配に関する責任)
第35条 分配した組合財産の帳簿価額(以下この条及び次条において「分配額」という。)がその分配の日における分配可能額を超える場合には、当該分配を受けた組合員は、組合に対し、連帯して、分配額に相当する金銭を支払う義務を負う。
2 前項に規定する場合において、当該分配を受けた組合員は、分配額が分配可能額を超過した額(同項の義務を履行した額を除く。)を限度として、連帯して、組合の債務を弁済する責任を負う。
(欠損が生じた場合の責任)
第36条 組合員が組合財産の分配を受けた場合において、当該分配を受けた日の属する事業年度の末日に欠損額(貸借対照表上の負債の額が資産の額を上回る場合において、当該負債の額から当該資産の額を控除して得た額をいう。以下この条において同じ。)が生じたときは、当該分配を受けた組合員は、組合に対し、連帯して、当該欠損額(当該欠損額が分配額を超えるときは、当該分配額。次項において同じ。)を支払う義務を負う。ただし、組合員が組合財産を分配するについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
2 前項の規定により組合員が組合に対して欠損額を支払う義務を負う場合において、当該分配を受けた組合員は、当該欠損額(同項の義務を履行した額を除く。)を限度として、連帯して、組合の債務を弁済する責任を負う。
第5章 組合の解散及び清算
(解散の事由)
第37条 組合は、次に掲げる事由によって解散する。ただし、第2号又は第3号に掲げる事由による場合にあっては、その事由が生じた日から2週間以内であって解散の登記をする日までに、新たに組合員(同号に掲げる事由による場合にあっては、居住者又は内国法人である組合員)を加入させたときは、この限りでない。
一 目的たる事業の成功又はその成功の不能
二 組合員が1人になったこと。
三 第3条第2項の規定に違反したこと。
四 存続期間の満了
五 総組合員の同意
六 組合契約書において前各号に掲げる事由以外の解散の事由を定めたときは、その事由の発生
(清算中の組合)
第38条 前条の規定により解散した組合は、解散の後であっても、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。
(清算人)
第39条 組合が解散したときは、組合員がその清算人となる。ただし、総組合員の過半数をもって清算人を選任したときは、この限りでない。
2 前項の規定により清算人となる者がないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、清算人を選任する。
3 裁判所は、前項の規定により清算人を選任した場合には、組合員が当該清算人に対して支払う報酬の額を定めることができる。
(清算人の解任)
第40条 清算人(前条第2項の規定により裁判所が選任したものを除く。)は、いつでも、解任することができる。
2 前項の規定による解任は、組合契約書に別段の定めがある場合を除き、総組合員の過半数をもって決定する。
3 重要な事由があるときは、裁判所は、組合員その他利害関係人の申立てにより、清算人を解任することができる。
(清算人の業務執行の方法)
第41条 清算人が数人あるときは、清算に関する業務執行は、清算人の過半数をもって決定する。ただし、清算の常務は、その完了前に他の清算人が異議を述べない限り、各清算人が単独で行うことができる。
2 清算人は、前項本文の規定による決定に基づき、清算中の組合の業務を執行する。
3 民法第671条の規定は、清算人について準用する。
(清算人等の第三者に対する損害賠償責任)
第42条 清算人又は次条第1項の規定により選任された清算人の職務を行うべき者(以下この条において「清算人等」という。)がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該清算人等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2 前項の場合において、他の清算人等も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。
(法人が清算人である場合の特則)
第43条 法人が清算人である場合には、当該法人は、当該清算人の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名及び住所を組合員に通知しなければならない。
2 民法第671条の規定は、前項の規定により選任された清算人の職務を行うべき者について準用する。
(財産目録等の作成等)
第44条 清算人は、その就任後遅滞なく、清算中の組合の財産の現況を調査し、経済産業省令で定めるところにより、第37条各号に掲げる事由に該当することとなった日における財産目録及び貸借対照表(以下「財産目録等」という。)を作成し、各組合員にその内容を通知しなければならない。
2 清算人は、財産目録等を作成した時から清算中の組合の主たる事務所の所在地における清算結了の登記の時までの間、当該財産目録等を保存しなければならない。
3 清算人は、組合員の請求により、毎月清算の状況を報告しなければならない。
(財産目録等の提出命令)
第45条 裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、財産目録等の全部又は一部の提出を命ずることができる。
(債権者に対する公告等)
第46条 清算人は、その就任後遅滞なく、組合の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、2月を下ることができない。
2 前項の規定による公告には、当該債権者が当該期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記しなければならない。
(債務の弁済の制限)
第47条 清算人は、前条第1項の期間内は、清算中の組合の債務の弁済をすることができない。この場合において、清算中の組合の組合員は、その債務の不履行によって生じた責任を免れることができない。
2 前項の規定にかかわらず、清算人は、前条第1項の期間内であっても、裁判所の許可を得て、少額の債権、清算中の組合の財産につき存する担保権によって担保される債権その他これを弁済しても他の債権者を害するおそれがない債権に係る債務について、その弁済をすることができる。この場合において、当該許可の申立ては、清算人が2人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。
(条件付債権等に係る債務の弁済)
第48条 清算人は、条件付債権、存続期間が不確定な債権その他その額が不確定な債権に係る債務を弁済することができる。この場合においては、これらの債権を評価させるため、裁判所に対し、鑑定人の選任の申立てをしなければならない。
2 前項の場合において、清算人は、同項の鑑定人の評価に従い同項の債権に係る債務を弁済しなければならない。
3 第1項の鑑定人の選任の手続に関する費用は、清算中の組合の負担とする。当該鑑定人による鑑定のための呼出し及び質問に関する費用についても、同様とする。
(債務の弁済前における残余財産の分配の制限)
第49条 清算人は、清算中の組合の債務を弁済した後でなければ、当該組合の財産を組合員に分配することができない。ただし、その存否又は額について争いのある債権に係る債務についてその弁済をするために必要と認められる財産を留保した場合は、この限りでない。
(清算からの除斥)
第50条 清算中の組合の債権者(知れている債権者を除く。)であって第46条第1項の期間内にその債権の申出をしなかったものは、清算から除斥される。
2 前項の規定により清算から除斥された債権者は、分配がされていない残余財産に対してのみ、弁済を請求することができる。
3 清算中の組合の残余財産を組合員の一部に分配した場合には、当該組合員の受けた分配と同一の割合の分配を当該組合員以外の組合員に対してするために必要な財産は、前項の残余財産から控除する。
(清算事務の終了)
第51条 清算人は、清算事務が終了したときは、遅滞なく、清算に係る計算をして、組合員の承認を受けなければならない。
2 組合員が1月以内に前項の計算について異議を述べなかったときは、組合員は、当該計算の承認をしたものとみなす。ただし、清算人の職務の執行に不正の行為があったときは、この限りでない。
(帳簿資料の保存)
第52条 清算人は、清算中の組合の主たる事務所の所在地における清算結了の登記の時から10年間、清算中の組合の帳簿並びにその事業及び清算に関する重要な資料(以下この条において「帳簿資料」という。)を保存しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、組合契約書において又は総組合員の過半数をもって帳簿資料を保存する者を定めた場合には、その者は、清算中の組合の主たる事務所の所在地における清算結了の登記の時から10年間、帳簿資料を保存しなければならない。
3 裁判所は、利害関係人の申立てにより、第1項の清算人又は前項の規定により帳簿資料を保存する者に代わって帳簿資料を保存する者を選任することができる。この場合においては、前2項の規定は、適用しない。
4 前項の規定により選任された者は、清算中の組合の主たる事務所の所在地における清算結了の登記の時から10年間、帳簿資料を保存しなければならない。
5 第3項の規定による選任の手続に関する費用は、清算中の組合の負担とする。
(解散及び清算についての準用規定)
第53条 第23条の規定は、仮処分命令により清算人の職務を代行する者が選任された場合について準用する。
2 組合の解散及び清算については、会社法第868条第1項、第869条、第870条第1項(第1号及び第2号に係る部分に限る。)、第871条、第872条(第4号に係る部分に限る。)、第874条(第1号及び第4号に係る部分に限る。)、第875条、第876条及び第937条第1項(第2号ホ及び第3号イに係る部分に限る。)の規定を準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める。
(適用除外)
第54条 第3章及び前章(第28条、第29条第4項、第30条、第31条第4項から第6項まで及び第32条を除く。)の規定は、清算中の組合については、適用しない。
(相続による脱退の特則)
第55条 清算中の組合の組合員が死亡した場合において、当該組合員の相続人が2人以上であるときは、清算に関して当該組合員の権利を行使する者1人を定めなければならない。
第6章 民法の準用
第56条 組合については、民法第668条、第669条、第671条、第673条、第674条第2項、第676条、第677条、第681条、第683条、第684条及び第688条の規定を準用する。
第7章 登記
(組合契約の効力の発生の登記)
第57条 組合契約が効力を生じたときは、2週間以内に、組合の主たる事務所の所在地において、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 第4条第3項第1号、第2号及び第4号から第6号までに掲げる事項
二 組合の事務所の所在場所
三 組合員が法人であるときは、当該組合員の職務を行うべき者の氏名及び住所
四 組合契約書において第37条第1号から第5号までに掲げる事由以外の解散の事由を定めたときは、その事由
(変更の登記)
第58条 組合において前条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、2週間以内に、その主たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。
(他の登記所の管轄区域内への主たる事務所の移転の登記)
第59条 組合がその主たる事務所を他の登記所の管轄区域内に移転したときは、2週間以内に、旧所在地においては移転の登記をし、新所在地においては第57条各号に掲げる事項を登記しなければならない。
(業務執行停止の仮処分命令等の登記)
第60条 組合員の業務の執行を停止し、若しくはその業務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされたときは、その主たる事務所の所在地において、その登記をしなければならない。
(解散の登記)
第61条 第37条の規定により組合が解散したときは、2週間以内に、その主たる事務所の所在地において、解散の登記をしなければならない。
(清算人の登記)
第62条 組合員が清算人となったときは、解散の日から2週間以内に、その主たる事務所の所在地において、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 清算人の氏名又は名称及び住所
二 清算人が法人であるときは、当該清算人の職務を行うべき者の氏名及び住所
2 清算人が選任されたときは、2週間以内に、その主たる事務所の所在地において、前項各号に掲げる事項を登記しなければならない。
3 第58条の規定は前2項の規定による登記について、第60条の規定は清算人について、それぞれ準用する。
(清算結了の登記)
第63条 清算が結了したときは、第51条の承認の日から2週間以内に、その主たる事務所の所在地において、清算結了の登記をしなければならない。
(従たる事務所の所在地における登記)
第64条 従たる事務所を設けたとき(当該従たる事務所が主たる事務所の所在地を管轄する登記所の管轄区域内にある場合を除く。)は、当該従たる事務所を設けた日から3週間以内に、その所在地において、従たる事務所の所在地における登記をしなければならない。
2 従たる事務所の所在地における登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。ただし、従たる事務所の所在地を管轄する登記所の管轄区域内に新たに従たる事務所を設けたときは、第3号に掲げる事項を登記すれば足りる。
一 名称
二 主たる事務所の所在場所
三 従たる事務所(その所在地を管轄する登記所の管轄区域内にあるものに限る。)の所在場所
3 前項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、3週間以内に、当該従たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。
(他の登記所の管轄区域内への従たる事務所の移転の登記)
第64条の2 組合がその従たる事務所を他の登記所の管轄区域内に移転したときは、旧所在地(主たる事務所の所在地を管轄する登記所の管轄区域内にある場合を除く。)においては3週間以内に移転の登記をし、新所在地(主たる事務所の所在地を管轄する登記所の管轄区域内にある場合を除く。以下この条において同じ。)においては4週間以内に前条第2項各号に掲げる事項を登記しなければならない。ただし、従たる事務所の所在地を管轄する登記所の管轄区域内に新たに従たる事務所を移転したときは、新所在地においては、同項第3号に掲げる事項を登記すれば足りる。
(従たる事務所の所在地における清算結了の登記)
第64条の3 清算が結了したときは、第51条の承認の日から3週間以内に、その従たる事務所の所在地においても、清算結了の登記をしなければならない。
(管轄登記所及び登記簿)
第65条 組合契約の登記に関する事務は、組合の事務所の所在地を管轄する法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所が管轄登記所としてつかさどる。
2 登記所に、有限責任事業組合契約登記簿を備える。
(登記の申請)
第66条 第57条から第59条まで、第64条及び第64条の2の規定による登記は組合員の申請によって、第61条から第63条まで及び第64条の3の規定による登記は清算人の申請によってする。
(組合契約の効力の発生の登記の添付書面)
第67条 組合契約の効力の発生の登記の申請書には、次の書面を添付しなければならない。
一 組合契約書
二 第3条第1項に規定する出資に係る払込み及び給付があったことを証する書面
三 組合員が法人であるときは、次の書面
イ 当該法人の登記事項証明書。ただし、当該登記所の管轄区域内に当該法人の本店又は主たる事務所がある場合を除く。
ロ 当該組合員の職務を行うべき者の選任に関する書面
ハ 当該組合員の職務を行うべき者が就任を承諾したことを証する書面
(変更の登記等の添付書面)
第68条 第57条各号に掲げる事項の変更の登記の申請書には、当該事項の変更を証する書面を添付しなければならない。
2 法人である組合員の加入による変更の登記の申請書には、前条第3号に掲げる書面を添付しなければならない。
(解散の登記の添付書面)
第69条 解散の登記の申請書には、その事由の発生を証する書面を添付しなければならない。
(清算人の登記の添付書面)
第70条 次の各号に掲げる者が清算人となった場合の清算人の登記の申請書には、当該各号に定める書面を添付しなければならない。
一 第39条第1項ただし書の規定により選任された者 次の書面
イ 総組合員の過半数の一致があったことを証する書面
ロ 選任された者が就任を承諾したことを証する書面
二 裁判所が選任した者 その選任を証する書面
2 第67条(第3号に係る部分に限る。)の規定は、清算人が法人である場合の清算人の登記について準用する。
(清算人に関する変更の登記の添付書面)
第71条 清算人の退任による変更の登記の申請書には、退任を証する書面を添付しなければならない。
2 第62条第1項各号に掲げる事項の変更の登記の申請書には、登記事項の変更を証する書面を添付しなければならない。
(清算結了の登記の添付書面)
第72条 清算結了の登記の申請書には、第51条の規定による清算に係る計算の承認があったことを証する書面を添付しなければならない。
(商業登記法及び民事保全法の準用)
第73条 組合の登記については、商業登記法(昭和38年法律第125号)第2条から第5条まで、第7条から第15条まで、第17条、第18条、第19条の2から第24条まで、第26条、第27条、第48条から第53条まで、第71条第1項及び第132条から第148条まで並びに民事保全法第56条の規定を準用する。この場合において、商業登記法第48条第2項中「会社法第930条第2項各号」とあるのは「有限責任事業組合契約に関する法律第64条第2項各号」と、民事保全法第56条中「法人を代表する者その他法人の役員」とあるのは「有限責任事業組合の組合員又は清算人」と、「法人の本店又は主たる事務所の所在地(外国法人にあっては、各事務所の所在地)」とあるのは「有限責任事業組合の主たる事務所の所在地」と読み替えるものとする。
第8章 組合財産の分割禁止の登記
第74条 組合財産が不動産に関する権利(不動産登記法(平成16年法律第123号)第3条各号に掲げる権利をいう。次項において同じ。)であるときは、第56条において準用する民法第676条第2項の規定にかかわらず、次項の規定により読み替えて適用される不動産登記法第59条第6号に規定する共有物分割禁止の定めの登記をしなければ、清算前に当該組合財産について分割を求めることができないことを第三者に対抗することができない。
2 組合財産が不動産に関する権利である場合における不動産登記法の適用については、同法第59条第6号中「又は同法第907条第3項の規定により家庭裁判所が遺産である共有物若しくは所有権以外の財産権についてした分割を禁止する審判」とあるのは、「、同法第907条第3項の規定により家庭裁判所が遺産である共有物若しくは所有権以外の財産権についてした分割を禁止する審判又は共有物若しくは所有権以外の財産権が有限責任事業組合の組合財産である場合における当該有限責任事業組合についての有限責任事業組合契約」とする。
第9章 罰則
第75条 組合員若しくは清算人又は仮処分命令により選任された組合員若しくは清算人の職務を代行する者は、次のいずれかに該当する場合には、100万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
一 この法律の規定による登記をすることを怠ったとき。
二 この法律の規定による公告若しくは通知をすることを怠ったとき、又は不正の公告若しくは通知をしたとき。
三 組合契約書、会計帳簿、財務諸表又は財産目録等に記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、又は虚偽の記載若しくは記録をしたとき。
四 第31条第4項又は第5項の規定に違反して、財務諸表又は組合契約書を備え置かなかったとき。
五 第31条第6項の規定に違反して、正当な理由がないのに財務諸表又は組合契約書の閲覧又は謄写を拒んだとき。
六 清算の結了を遅延させる目的で、第46条第1項の期間を不当に定めたとき。
七 第47条第1項の規定に違反して、債務の弁済をしたとき。
八 第49条の規定に違反して、清算中の組合の財産を分配したとき。
第76条 第9条第3項において準用する会社法第8条第1項の規定に違反した者は、20万円以下の過料に処する。
附則
(施行期日)
第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(組合の名称についての経過措置)
第2条 この法律の施行の際現にその名称中に有限責任事業組合という文字を使用している者については、第9条第2項の規定は、この法律の施行後6月間は、適用しない。
附則 (平成17年7月26日法律第87号) 抄
この法律は、会社法の施行の日から施行する。
附則 (平成18年6月2日法律第50号) 抄
この法律は、一般社団・財団法人法の施行の日から施行する。
附則 (平成18年12月15日法律第109号) 抄
この法律は、新信託法の施行の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 第9条(商法第7条の改正規定に限る。)、第25条(投資信託及び投資法人に関する法律第251条第24号の改正規定に限る。)、第37条(金融機関の合併及び転換に関する法律第76条第7号の改正規定に限る。)、第49条(保険業法第17条の6第1項第7号、第53条の12第8項、第53条の15、第53条の25第2項、第53条の27第3項、第53条の32、第180条の5第3項及び第4項並びに第180条の9第5項の改正規定に限る。)、第55条(資産の流動化に関する法律第76条第6項、第85条、第168条第5項、第171条第6項及び第316条第1項第23号の改正規定に限る。)、第59条、第75条及び第77条(会社法目次の改正規定、同法第132条に2項を加える改正規定、同法第2編第2章第3節中第154条の次に1款を加える改正規定、同法第2編第3章第4節中第272条の次に1款を加える改正規定、同法第695条の次に1条を加える改正規定及び同法第943条第1号の改正規定を除く。)の規定 公布の日
附則 (平成19年6月27日法律第95号) 抄
(施行期日)
第1条 この法律は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
附則 (平成23年5月25日法律第53号)
この法律は、新非訟事件手続法の施行の日から施行する。
附則 (平成23年6月24日法律第74号) 抄
(施行期日)
第1条 この法律は、公布の日から起算して20日を経過した日から施行する。
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