こうきょうこうじのひんしつかくほのそくしんにかんするほうりつ
公共工事の品質確保の促進に関する法律
平成17年法律第18号
第1章 総則
(目的)
第1条 この法律は、公共工事の品質確保が、良質な社会資本の整備を通じて、豊かな国民生活の実現及びその安全の確保、環境の保全(良好な環境の創出を含む。)、自立的で個性豊かな地域社会の形成等に寄与するものであるとともに、現在及び将来の世代にわたる国民の利益であることに鑑み、公共工事の品質確保に関する基本理念、国等の責務、基本方針の策定等その担い手の中長期的な育成及び確保の促進その他の公共工事の品質確保の促進に関する基本的事項を定めることにより、現在及び将来の公共工事の品質確保の促進を図り、もって国民の福祉の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において「公共工事」とは、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成12年法律第127号)第2条第2項に規定する公共工事をいう。
(基本理念)
第3条 公共工事の品質は、公共工事が現在及び将来における国民生活及び経済活動の基盤となる社会資本を整備するものとして社会経済上重要な意義を有することに鑑み、国及び地方公共団体並びに公共工事の発注者及び受注者がそれぞれの役割を果たすことにより、現在及び将来の国民のために確保されなければならない。
2 公共工事の品質は、建設工事が、目的物が使用されて初めてその品質を確認できること、その品質が受注者の技術的能力に負うところが大きいこと、個別の工事により条件が異なること等の特性を有することに鑑み、経済性に配慮しつつ価格以外の多様な要素をも考慮し、価格及び品質が総合的に優れた内容の契約がなされることにより、確保されなければならない。
3 公共工事の品質は、施工技術の維持向上が図られ、並びにそれを有する者等が公共工事の品質確保の担い手として中長期的に育成され、及び確保されることにより、将来にわたり確保されなければならない。
4 公共工事の品質は、公共工事の発注者(第24条を除き、以下「発注者」という。)の能力及び体制を考慮しつつ、工事の性格、地域の実情等に応じて多様な入札及び契約の方法の中から適切な方法が選択されることにより、確保されなければならない。
5 公共工事の品質は、これを確保する上で工事の効率性、安全性、環境への影響等が重要な意義を有することに鑑み、より適切な技術又は工夫により、確保されなければならない。
6 公共工事の品質は、完成後の適切な点検、診断、維持、修繕その他の維持管理により、将来にわたり確保されなければならない。
7 公共工事の品質は、地域において災害時における対応を含む社会資本の維持管理が適切に行われるよう、地域の実情を踏まえ地域における公共工事の品質確保の担い手の育成及び確保について配慮がなされることにより、将来にわたり確保されなければならない。
8 公共工事の品質確保に当たっては、入札及び契約の過程並びに契約の内容の透明性並びに競争の公正性が確保されること、談合、入札談合等関与行為その他の不正行為の排除が徹底されること、その請負代金の額によっては公共工事の適正な施工が通常見込まれない契約の締結が防止されること並びに契約された公共工事の適正な施工が確保されることにより、受注者としての適格性を有しない建設業者が排除されること等の入札及び契約の適正化が図られるように配慮されなければならない。
9 公共工事の品質確保に当たっては、民間事業者の能力が適切に評価され、並びに入札及び契約に適切に反映されること、民間事業者の積極的な技術提案(公共工事に関する技術又は工夫についての提案をいう。以下同じ。)及び創意工夫が活用されること等により民間事業者の能力が活用されるように配慮されなければならない。
10 公共工事の品質確保に当たっては、公共工事の受注者のみならず下請負人及びこれらの者に使用される技術者、技能労働者等がそれぞれ公共工事の品質確保において重要な役割を果たすことに鑑み、公共工事における請負契約(下請契約を含む。)の当事者が各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を適正な額の請負代金で締結し、その請負代金をできる限り速やかに支払う等信義に従って誠実にこれを履行するとともに、公共工事に従事する者の賃金その他の労働条件、安全衛生その他の労働環境が改善されるように配慮されなければならない。
11 公共工事の品質確保に当たっては、公共工事に関する調査(点検及び診断を含む。以下同じ。)及び設計の品質が公共工事の品質確保を図る上で重要な役割を果たすものであることに鑑み、前各項の趣旨を踏まえ、公共工事に準じ、その業務の内容に応じて必要な知識又は技術を有する者の能力がその者の有する資格等により適切に評価され、及びそれらの者が十分に活用されること等により、公共工事に関する調査及び設計の品質が確保されるようにしなければならない。
(国の責務)
第4条 国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、公共工事の品質確保の促進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第5条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、その地域の実情を踏まえ、公共工事の品質確保の促進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(国及び地方公共団体の相互の連携及び協力)
第6条 国及び地方公共団体は、公共工事の品質確保の促進に関する施策の策定及び実施に当たっては、基本理念の実現を図るため、相互に緊密な連携を図りながら協力しなければならない。
(発注者の責務)
第7条 発注者は、基本理念にのっとり、現在及び将来の公共工事の品質が確保されるよう、公共工事の品質確保の担い手の中長期的な育成及び確保に配慮しつつ、仕様書及び設計書の作成、予定価格の作成、入札及び契約の方法の選択、契約の相手方の決定、工事の監督及び検査並びに工事中及び完成時の施工状況の確認及び評価その他の事務(以下「発注関係事務」という。)を、次に定めるところによる等適切に実施しなければならない。
一 公共工事を施工する者が、公共工事の品質確保の担い手が中長期的に育成され及び確保されるための適正な利潤を確保することができるよう、適切に作成された仕様書及び設計書に基づき、経済社会情勢の変化を勘案し、市場における労務及び資材等の取引価格、施工の実態等を的確に反映した積算を行うことにより、予定価格を適正に定めること。
二 入札に付しても定められた予定価格に起因して入札者又は落札者がなかったと認める場合において更に入札に付するときその他必要があると認めるときは、当該入札に参加する者から当該入札に係る工事の全部又は一部の見積書を徴することその他の方法により積算を行うことにより、適正な予定価格を定め、できる限り速やかに契約を締結するよう努めること。
三 その請負代金の額によっては公共工事の適正な施工が通常見込まれない契約の締結を防止するため、その入札金額によっては当該公共工事の適正な施工が通常見込まれない契約となるおそれがあると認められる場合の基準又は最低制限価格の設定その他の必要な措置を講ずること。
四 計画的に発注を行うとともに、適切な工期を設定するよう努めること。
五 設計図書(仕様書、設計書及び図面をいう。以下この号において同じ。)に適切に施工条件を明示するとともに、設計図書に示された施工条件と実際の工事現場の状態が一致しない場合、設計図書に示されていない施工条件について予期することができない特別な状態が生じた場合その他の場合において必要があると認められるときは、適切に設計図書の変更及びこれに伴い必要となる請負代金の額又は工期の変更を行うこと。
六 必要に応じて完成後の一定期間を経過した後において施工状況の確認及び評価を実施するよう努めること。
2 発注者は、公共工事の施工状況の評価に関する資料その他の資料が将来における自らの発注に、及び発注者間においてその発注に相互に、有効に活用されるよう、その評価の標準化のための措置並びにこれらの資料の保存のためのデータベースの整備及び更新その他の必要な措置を講じなければならない。
3 発注者は、発注関係事務を適切に実施するため、必要な職員の配置その他の体制の整備に努めるとともに、他の発注者と情報交換を行うこと等により連携を図るように努めなければならない。
(受注者の責務)
第8条 公共工事の受注者は、基本理念にのっとり、契約された公共工事を適正に実施し、下請契約を締結するときは、適正な額の請負代金での下請契約の締結に努めなければならない。
2 公共工事の受注者(受注者となろうとする者を含む。)は、契約された又は将来施工することとなる公共工事の適正な実施のために必要な技術的能力の向上並びに技術者、技能労働者等の育成及び確保並びにこれらの者に係る賃金その他の労働条件、安全衛生その他の労働環境の改善に努めなければならない。
第2章 基本方針等
(基本方針)
第9条 政府は、公共工事の品質確保の促進に関する施策を総合的に推進するための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 公共工事の品質確保の促進の意義に関する事項
二 公共工事の品質確保の促進のための施策に関する基本的な方針
3 基本方針の策定に当たっては、特殊法人等(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第2条第1項に規定する特殊法人等をいう。以下同じ。)及び地方公共団体の自主性に配慮しなければならない。
4 政府は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5 前2項の規定は、基本方針の変更について準用する。
(基本方針に基づく責務)
第10条 各省各庁の長(財政法(昭和22年法律第34号)第20条第2項に規定する各省各庁の長をいう。)、特殊法人等の代表者(当該特殊法人等が独立行政法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人をいう。)である場合にあっては、その長)及び地方公共団体の長は、基本方針に定めるところに従い、公共工事の品質確保の促進を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(関係行政機関の協力体制)
第11条 政府は、基本方針の策定及びこれに基づく施策の実施に関し、関係行政機関による協力体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。
第3章 多様な入札及び契約の方法等
第1節 競争参加者の技術的能力の審査等
(競争参加者の技術的能力の審査)
第12条 発注者は、その発注に係る公共工事の契約につき競争に付するときは、競争に参加しようとする者について、工事の経験、施工状況の評価、当該公共工事に配置が予定される技術者の経験その他競争に参加しようとする者の技術的能力に関する事項を審査しなければならない。
(競争参加者の中長期的な技術的能力の確保に関する審査等)
第13条 発注者は、その発注に係る公共工事の契約につき競争に付するときは、当該公共工事の性格、地域の実情等に応じ、競争に参加する者(競争に参加しようとする者を含む。以下同じ。)について、若年の技術者、技能労働者等の育成及び確保の状況、建設機械の保有の状況、災害時における工事の実施体制の確保の状況等に関する事項を適切に審査し、又は評価するよう努めなければならない。
第2節 多様な入札及び契約の方法
(多様な入札及び契約の方法の中からの適切な方法の選択)
第14条 発注者は、入札及び契約の方法の決定に当たっては、その発注に係る公共工事の性格、地域の実情等に応じ、この節に定める方式その他の多様な方法の中から適切な方法を選択し、又はこれらの組合せによることができる。
(競争参加者の技術提案を求める方式)
第15条 発注者は、競争に参加する者に対し、技術提案を求めるよう努めなければならない。ただし、発注者が、当該公共工事の内容に照らし、その必要がないと認めるときは、この限りではない。
2 発注者は、前項の規定により技術提案を求めるに当たっては、競争に参加する者の技術提案に係る負担に配慮しなければならない。
3 発注者は、競争に付された公共工事につき技術提案がされたときは、これを適切に審査し、及び評価しなければならない。この場合において、発注者は、中立かつ公正な審査及び評価が行われるようこれらに関する当事者からの苦情を適切に処理することその他の必要な措置を講ずるものとする。
4 発注者は、競争に付された公共工事を技術提案の内容に従って確実に実施することができないと認めるときは、当該技術提案を採用しないことができる。
5 発注者は、競争に参加する者に対し技術提案を求めて落札者を決定する場合には、あらかじめその旨及びその評価の方法を公表するとともに、その評価の後にその結果を公表しなければならない。ただし、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第4条から第8条までに定める公共工事の入札及び契約に関する情報の公表がなされない公共工事についての技術提案の評価の結果については、この限りではない。
(段階的選抜方式)
第16条 発注者は、競争に参加する者に対し技術提案を求める方式による場合において競争に参加する者の数が多数であると見込まれるときその他必要があると認めるときは、必要な施工技術を有する者が新規に競争に参加することが不当に阻害されることのないように配慮しつつ、当該公共工事に係る技術的能力に関する事項を評価すること等により一定の技術水準に達した者を選抜した上で、これらの者の中から落札者を決定することができる。
(技術提案の改善)
第17条 発注者は、技術提案をした者に対し、その審査において、当該技術提案についての改善を求め、又は改善を提案する機会を与えることができる。この場合において、発注者は、技術提案の改善に係る過程について、その概要を公表しなければならない。
2 第15条第5項ただし書の規定は、技術提案の改善に係る過程の概要の公表について準用する。
(技術提案の審査及び価格等の交渉による方式)
第18条 発注者は、当該公共工事の性格等により当該工事の仕様の確定が困難である場合において自らの発注の実績等を踏まえ必要があると認めるときは、技術提案を公募の上、その審査の結果を踏まえて選定した者と工法、価格等の交渉を行うことにより仕様を確定した上で契約することができる。この場合において、発注者は、技術提案の審査及び交渉の結果を踏まえ、予定価格を定めるものとする。
2 発注者は、前項の技術提案の審査に当たり、中立かつ公正な審査が行われるよう、中立の立場で公正な判断をすることができる学識経験者の意見を聴くとともに、当該審査に関する当事者からの苦情を適切に処理することその他の必要な措置を講ずるものとする。
3 発注者は、第1項の技術提案の審査の結果並びに審査及び交渉の過程の概要を公表しなければならない。この場合においては、第15条第5項ただし書の規定を準用する。
(高度な技術等を含む技術提案を求めた場合の予定価格)
第19条 発注者は、前条第1項の場合を除くほか、高度な技術又は優れた工夫を含む技術提案を求めたときは、当該技術提案の審査の結果を踏まえて、予定価格を定めることができる。この場合において、発注者は、当該技術提案の審査に当たり、中立の立場で公正な判断をすることができる学識経験者の意見を聴くものとする。
(地域における社会資本の維持管理に資する方式)
第20条 発注者は、公共工事の発注に当たり、地域における社会資本の維持管理の効率的かつ持続的な実施のために必要があると認めるときは、地域の実情に応じ、次に掲げる方式等を活用するものとする。
一 工期が複数年度にわたる公共工事を一の契約により発注する方式
二 複数の公共工事を一の契約により発注する方式
三 複数の建設業者により構成される組合その他の事業体が競争に参加することができることとする方式
第3節 発注関係事務を適切に実施することができる者の活用及び発注者に対する支援等
(発注関係事務を適切に実施することができる者の活用)
第21条 発注者は、その発注に係る公共工事が専門的な知識又は技術を必要とすることその他の理由により自ら発注関係事務を適切に実施することが困難であると認めるときは、国、地方公共団体その他法令又は契約により発注関係事務の全部又は一部を行うことができる者の能力を活用するよう努めなければならない。この場合において、発注者は、発注関係事務を適正に行うことができる知識及び経験を有する職員が置かれていること、法令の遵守及び秘密の保持を確保できる体制が整備されていることその他発注関係事務を公正に行うことができる条件を備えた者を選定するものとする。
2 発注者は、前項の場合において、契約により発注関係事務の全部又は一部を行うことができる者を選定したときは、その者が行う発注関係事務の公正性を確保するために必要な措置を講ずるものとする。
3 第1項の規定により、契約により発注関係事務の全部又は一部を行う者は、基本理念にのっとり、発注関係事務を適切に実施しなければならない。
4 国及び都道府県は、発注者を支援するため、専門的な知識又は技術を必要とする発注関係事務を適切に実施することができる者の育成及びその活用の促進、発注関係事務を公正に行うことができる条件を備えた者の適切な評価及び選定に関する協力、発注者間の連携体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(発注関係事務の運用に関する指針)
第22条 国は、基本理念にのっとり、発注者を支援するため、地方公共団体、学識経験者、民間事業者その他の関係者の意見を聴いて、公共工事の性格、地域の実情等に応じた入札及び契約の方法の選択その他の発注関係事務の適切な実施に係る制度の運用に関する指針を定めるものとする。
(国の援助)
第23条 国は、第21条第4項及び前条に規定するもののほか、地方公共団体が講ずる公共工事の品質確保の担い手の中長期的な育成及び確保の促進その他の公共工事の品質確保の促進に関する施策に関し、必要な助言その他の援助を行うよう努めなければならない。
(公共工事に関する調査及び設計の品質確保)
第24条 公共工事に関する調査又は設計の発注者は、その発注に当たり、公共工事に準じ、競争に参加しようとする者について調査又は設計の業務の経験、当該業務に配置が予定される技術者の経験又は有する資格その他技術的能力に関する事項を審査すること、受注者となろうとする者に調査又は設計に関する技術又は工夫についての提案を求めることその他の当該業務の性格、地域の実情等に応じた入札及び契約の方法を選択すること等により、その品質を確保するよう努めなければならない。
2 公共工事に関する調査又は設計の発注者は、公共工事に準じ、業務状況の評価の標準化並びに調査又は設計の成果及び評価に関する資料その他の資料の保存に関し、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
3 国は、公共工事に関する調査及び設計に関し、その業務の内容に応じて必要な知識又は技術を有する者の能力がその者の有する資格等により適切に評価され、及びそれらの者が十分に活用されるようにするため、これらに係る資格等の評価の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
附則
(施行期日)
1 この法律は、平成17年4月1日から施行する。
(検討)
2 政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、この法律の施行の状況等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
附則 (平成26年6月4日法律第56号) 抄
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(検討)
2 政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律による改正後の公共工事の品質確保の促進に関する法律の施行の状況等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
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