こうどじょうほうつうしんネットワークしゃかいけいせいきほんほう
高度情報通信ネットワーク社会形成基本法
平成12年法律第144号
第1章 総則
(目的)
第1条 この法律は、情報通信技術の活用により世界的規模で生じている急激かつ大幅な社会経済構造の変化に適確に対応することの緊要性にかんがみ、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関し、基本理念及び施策の策定に係る基本方針を定め、国及び地方公共団体の責務を明らかにし、並びに高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部を設置するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画の作成について定めることにより、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進することを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において「高度情報通信ネットワーク社会」とは、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて自由かつ安全に多様な情報又は知識を世界的規模で入手し、共有し、又は発信することにより、あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展が可能となる社会をいう。
(すべての国民が情報通信技術の恵沢を享受できる社会の実現)
第3条 高度情報通信ネットワーク社会の形成は、すべての国民が、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを容易にかつ主体的に利用する機会を有し、その利用の機会を通じて個々の能力を創造的かつ最大限に発揮することが可能となり、もって情報通信技術の恵沢をあまねく享受できる社会が実現されることを旨として、行われなければならない。
(経済構造改革の推進及び産業国際競争力の強化)
第4条 高度情報通信ネットワーク社会の形成は、電子商取引その他の高度情報通信ネットワークを利用した経済活動(以下「電子商取引等」という。)の促進、中小企業者その他の事業者の経営の能率及び生産性の向上、新たな事業の創出並びに就業の機会の増大をもたらし、もって経済構造改革の推進及び産業の国際競争力の強化に寄与するものでなければならない。
(ゆとりと豊かさを実感できる国民生活の実現)
第5条 高度情報通信ネットワーク社会の形成は、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じた、国民生活の全般にわたる質の高い情報の流通及び低廉な料金による多様なサービスの提供により、生活の利便性の向上、生活様式の多様化の促進及び消費者の主体的かつ合理的選択の機会の拡大が図られ、もってゆとりと豊かさを実感できる国民生活の実現に寄与するものでなければならない。
(活力ある地域社会の実現及び住民福祉の向上)
第6条 高度情報通信ネットワーク社会の形成は、情報通信技術の活用による、地域経済の活性化、地域における魅力ある就業の機会の創出並びに地域内及び地域間の多様な交流の機会の増大による住民生活の充実及び利便性の向上を通じて、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現及び地域住民の福祉の向上に寄与するものでなければならない。
(国及び地方公共団体と民間との役割分担)
第7条 高度情報通信ネットワーク社会の形成に当たっては、民間が主導的役割を担うことを原則とし、国及び地方公共団体は、公正な競争の促進、規制の見直し等高度情報通信ネットワーク社会の形成を阻害する要因の解消その他の民間の活力が十分に発揮されるための環境整備等を中心とした施策を行うものとする。
(利用の機会等の格差の是正)
第8条 高度情報通信ネットワーク社会の形成に当たっては、地理的な制約、年齢、身体的な条件その他の要因に基づく情報通信技術の利用の機会又は活用のための能力における格差が、高度情報通信ネットワーク社会の円滑かつ一体的な形成を著しく阻害するおそれがあることにかんがみ、その是正が積極的に図られなければならない。
(社会経済構造の変化に伴う新たな課題への対応)
第9条 高度情報通信ネットワーク社会の形成に当たっては、情報通信技術の活用により生ずる社会経済構造の変化に伴う雇用その他の分野における各般の新たな課題について、適確かつ積極的に対応しなければならない。
(国及び地方公共団体の責務)
第10条 国は、第3条から前条までに定める高度情報通信ネットワーク社会の形成についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
第11条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
第12条 国及び地方公共団体は、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策が迅速かつ重点的に実施されるよう、相互に連携を図らなければならない。
(法制上の措置等)
第13条 政府は、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
(統計等の作成及び公表)
第14条 政府は、高度情報通信ネットワーク社会に関する統計その他の高度情報通信ネットワーク社会の形成に資する資料を作成し、インターネットの利用その他適切な方法により随時公表しなければならない。
(国民の理解を深めるための措置)
第15条 政府は、広報活動等を通じて、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する国民の理解を深めるよう必要な措置を講ずるものとする。
第2章 施策の策定に係る基本方針
(高度情報通信ネットワークの一層の拡充等の一体的な推進)
第16条 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、高度情報通信ネットワークの一層の拡充、高度情報通信ネットワークを通じて提供される文字、音声、映像その他の情報の充実及び情報通信技術の活用のために必要な能力の習得が不可欠であり、かつ、相互に密接な関連を有することにかんがみ、これらが一体的に推進されなければならない。
(世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成)
第17条 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、広く国民が低廉な料金で利用することができる世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成を促進するため、事業者間の公正な競争の促進その他の必要な措置が講じられなければならない。
(教育及び学習の振興並びに人材の育成)
第18条 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、すべての国民が情報通信技術を活用することができるようにするための教育及び学習を振興するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の発展を担う専門的な知識又は技術を有する創造的な人材を育成するために必要な措置が講じられなければならない。
(電子商取引等の促進)
第19条 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、規制の見直し、新たな準則の整備、知的財産権の適正な保護及び利用、消費者の保護その他の電子商取引等の促進を図るために必要な措置が講じられなければならない。
(行政の情報化)
第20条 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、国民の利便性の向上を図るとともに、行政運営の簡素化、効率化及び透明性の向上に資するため、国及び地方公共団体の事務におけるインターネットその他の高度情報通信ネットワークの利用の拡大等行政の情報化を積極的に推進するために必要な措置が講じられなければならない。
(公共分野における情報通信技術の活用)
第21条 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、国民の利便性の向上を図るため、情報通信技術の活用による公共分野におけるサービスの多様化及び質の向上のために必要な措置が講じられなければならない。
(高度情報通信ネットワークの安全性の確保等)
第22条 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保、個人情報の保護その他国民が高度情報通信ネットワークを安心して利用することができるようにするために必要な措置が講じられなければならない。
(研究開発の推進)
第23条 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、急速な技術の革新が、今後の高度情報通信ネットワーク社会の発展の基盤であるとともに、我が国産業の国際競争力の強化をもたらす源泉であることにかんがみ、情報通信技術について、国、地方公共団体、大学、事業者等の相互の密接な連携の下に、創造性のある研究開発が推進されるよう必要な措置が講じられなければならない。
(国際的な協調及び貢献)
第24条 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、高度情報通信ネットワークが世界的規模で展開していることにかんがみ、高度情報通信ネットワーク及びこれを利用した電子商取引その他の社会経済活動に関する、国際的な規格、準則等の整備に向けた取組、研究開発のための国際的な連携及び開発途上地域に対する技術協力その他の国際協力を積極的に行うために必要な措置が講じられなければならない。
第3章 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部
(設置)
第25条 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進するため、内閣に、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(以下「本部」という。)を置く。
(所掌事務等)
第26条 本部は、次に掲げる事務(サイバーセキュリティ基本法(平成26年法律第104号)第25条第1項に掲げる事務のうちサイバーセキュリティに関する施策で重要なものの実施の推進に関するものを除く。)をつかさどる。
一 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画(以下「重点計画」という。)を作成し、及びその実施を推進すること。
二 官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)第8条第1項に規定する官民データ活用推進基本計画の案の作成及び実施の推進に関すること。
三 前号に掲げるもののほか、官民データ活用推進基本法第2条第1項に規定する官民データ(以下この号において「官民データ」という。)の適正かつ効果的な活用の推進に関する施策で重要なものの企画に関する調査審議、施策の評価その他の官民データの適正かつ効果的な活用の推進に関する施策で重要なものの実施の推進及び総合調整に関すること。
四 前3号に掲げるもののほか、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策で重要なものの企画に関して審議し、及びその施策の実施を推進すること。
2 第28条第1項に規定する本部長は、前項に規定する事務(高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策で重要なものの実施の推進に限る。)のうち次に掲げる事項に係るもの及び第31条第1項に規定する協力の求めに係る事務を第30条第2項第2号に掲げる者をもって充てる同条第1項に規定する本部員に行わせることができる。
一 府省横断的な計画の作成
二 関係行政機関の経費の見積りの方針の作成
三 施策の実施に関する指針の作成
四 施策の評価
3 前項に規定する本部員は、同項に規定する事務を行う場合において、必要があると認めるときは、第28条第1項に規定する本部長に対し、当該事務に関し意見を述べることができる。
(組織)
第27条 本部は、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部長、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略副本部長及び高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部員をもって組織する。
(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部長)
第28条 本部の長は、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。
2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。
3 本部長は、第26条第2項に規定する本部員が同項に規定する事務を行う場合において、当該事務の適切な実施を図るため必要があると認めるときは、当該本部員に対し、当該事務の実施状況その他必要な事項の報告を求めることができる。
4 本部長は、第26条第3項の意見及び前項の報告に基づき、必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、勧告することができる。
(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略副本部長)
第29条 本部に、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、国務大臣をもって充てる。
2 副本部長は、本部長の職務を助ける。
(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部員)
第30条 本部に、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部員(以下「本部員」という。)を置く。
2 本部員は、次に掲げる者をもって充てる。
一 本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣
二 内閣情報通信政策監
三 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者
(官民データ活用推進戦略会議)
第30条の2 第26条第1項第2号及び第3号に掲げる事務を所掌させるため、別に法律で定めるところにより、本部に、官民データ活用推進戦略会議を置く。
(資料の提出その他の協力)
第31条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体及び独立行政法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人をいう。)の長並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成11年法律第91号)第4条第1項第9号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。
2 本部は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
(地方公共団体への協力)
第32条 地方公共団体は、第11条に規定する施策の策定又は実施のために必要があると認めるときは、本部に対し、情報の提供その他の協力を求めることができる。
2 本部は、前項の規定による協力を求められたときは、その求めに応じるよう努めるものとする。
(事務)
第33条 本部に関する事務は、内閣官房において処理し、命を受けて内閣官房副長官補が掌理する。
(主任の大臣)
第34条 本部に係る事項については、内閣法(昭和22年法律第5号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。
(政令への委任)
第35条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。
第4章 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画
第36条 本部は、この章の定めるところにより、重点計画を作成しなければならない。
2 重点計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 高度情報通信ネットワーク社会の形成のために政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策に関する基本的な方針
二 世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成の促進に関し政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策
三 教育及び学習の振興並びに人材の育成に関し政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策
四 電子商取引等の促進に関し政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策
五 行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進に関し政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策
六 高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保に関し政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策
七 前各号に定めるもののほか、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を政府が迅速かつ重点的に推進するために必要な事項
3 重点計画に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標及びその達成の期間を定めるものとする。
4 本部は、第1項の規定により重点計画を作成したときは、遅滞なく、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。
5 本部は、適時に、第3項の規定により定める目標の達成状況を調査し、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。
6 第4項の規定は、重点計画の変更について準用する。
附則
(施行期日)
1 この法律は、平成13年1月6日から施行する。
(検討)
2 政府は、この法律の施行後3年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
附則 (平成25年5月31日法律第22号)
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、次項(第4号に係る部分に限る。)の規定は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号)の公布の日又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日から施行する。
(検討)
2 政府は、第1条の規定による改正後の内閣法第16条第1項の規定により内閣官房に内閣情報通信政策監が置かれることを踏まえ、情報通信技術の活用により国民の利便性の向上及び行政運営の改善を図る観点から、強化された内閣官房の総合調整機能を十全に発揮して、次に掲げる方策について総合的かつ一体的に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
一 行政機関が保有する情報をインターネットその他の高度情報通信ネットワークの利用を通じて公表するための方策
二 前号の情報を民間事業者が加工し、インターネットその他の高度情報通信ネットワークの利用を通じて国民に提供するための方策(当該情報の提供を受ける者が本人であることを確認するための措置を簡素化するための方策を含む。)
三 行政機関による情報システムの共用を推進するための方策
四 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第2条第14項に規定する情報提供ネットワークシステムを効率的に整備するための方策
附則 (平成26年11月12日法律第104号) 抄
(施行期日)
第1条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第2章及び第4章の規定並びに附則第4条の規定は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
附則 (平成27年9月11日法律第66号) 抄
(施行期日)
第1条 この法律は、平成28年4月1日から施行する。
附則 (平成28年12月14日法律第103号) 抄
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
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